次世代電池の最有力候補「全固体電池」の現在地

研究室では一部成果も、実用化までは茨の道

中国のEVメーカーNIOは今年1月、2022年に固体電池を搭載した航続距離1000キロメートル以上も可能なEVを実用化すると発表した。写真は今年4月の上海モーターショーのもの(写真:NIO提供)
カーボンニュートラル(二酸化炭素排出量の実質ゼロ)実現のキーテクノロジーの1つが蓄電池だ。特に電気自動車(EV)の普及には現在主流のリチウムイオン電池を超えることが求められており、次世代電池の有力候補とされるのが全固体電池だ。電池は正極材、負極材と電解質で構成されるが、液体の電解質(電解液)を使うリチウムイオン電池に対し、全固体電池は文字通り、固体の電解質を使う。
全固体電池はリチウムイオン電池よりも高性能(大容量、高出力など)が可能で、安全性も高まると期待されている。一方、そうした優位性を本当に実現できるのか疑問の声もある。全固体電池の材料研究で最前線に立つ東京工業大学・菅野了次教授に、全固体電池の開発の現状、課題などを聞いた。

リチウムイオン電池を超えるのに四苦八苦

――全固体電池になればEVは航続距離が飛躍的に延びる、充電時間が短縮されるなどと言われています。さらに全固体電池を搭載したEVを2022年にも市場投入すると発表したメーカーもあります。一方、全固体電池が現行のリチウムイオン電池を大きく上回る性能を実用できるか疑問の声もあります。全固体電池で飛躍的な性能向上は可能なのでしょうか。また研究室レベルではどこまで「見えている」のでしょうか。

明確に答えるのは難しい質問だが、材料の基礎研究の立場から説明したい。

まず、電池というのは正極と負極と電解質の組み合わせでできている。正極と負極でエネルギーが決まり、電解質が抵抗になる。電池は発明されてから長い期間、電解質には水溶液を使っていた。それが有機溶媒系に変わったのがリチウムイオン電池だ。これで使える電圧が一気に上がり、エネルギー密度(体積や重量あたりの容量)は格段に高まった。リチウムイオン電池は本当に革新的な電池だ。

次のステップとして、多くの人々がリチウムイオン電池を超える電池を作ろうと試みており、1つの可能性として固体電池がある。しかし、リチウムイオン電池があまりにもすばらしいので、なかなかそれを超えることができず、われわれも四苦八苦している。

――電解質を固体にすれば性能が大きく向上するのではないのですか。

エネルギー密度は基本的に正極と負極で決まるので、電解質が固体になったからといって、基本的にそんなに変わるわけではない。固体電池を研究してきたわれわれは固体電池にメリットがあると言ってきたが、なかなか示すことができていないのが実情だ。

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