次世代電池の最有力候補「全固体電池」の現在地 研究室では一部成果も、実用化までは茨の道
また、低温や高温に強くなる。リチウムイオン電池はマイナス30度で凍るが固体なら凍らない。リチウムイオン電池は基本的には60度以上の場合は冷却装置がいるが、固体電池なら冷却装置がいらなくなる。100度でも150度でも大丈夫だ。
さらに、電解質がもう少し改善されればエネルギー密度そのものも上げられるのではないかと考えている。リチウムイオン電池では電解液の抵抗が大きいために正極と負極を薄いシートにして電極内の抵抗を減らしている。固体電池であれば電極を厚くできる可能性がある。ただし、これはまだ可能性の話だ。
正極と負極と電解質の材料の組み合わせで電池の性能は決まる。リチウムイオン電池は基礎研究段階で、ほぼすべての組み合わせは出尽くした感がある。
一方、固体電池はまだリチウムイオン電池より性能が低いものの、材料の組み合わせ次第で性能をもっと上げられるのではないか、と考えている。現在は液体の製造プロセスと似たプロセスで固体電池を作るのが主流だが、固体電池に最適化した製造プロセスを見つけることでもっと高い性能を目指せるかもしれない。そこは製造技術の開発の課題になってくる。
試験電池では約3倍のエネルギー密度も
――リチウムイオン電池は限界に近づいているが、固体電池にはまだ可能性がある、ということですね。今見えている範囲でエネルギー密度や充電時間(の短縮)がどこまで可能と感じていますか。
材料に関しては、2016年に正極材料当たりの重量で比較してリチウムイオン電池よりも2倍以上の出力が可能になることを実験で示した。試験電池ではエネルギー密度が約3倍、充電性能が約1.6倍といった性能が出ている。これらは車載用を想定したもので、車載用以外でもいろいろな研究成果が出ている。
――研究室レベルではリチウムイオン電池の性能を上回る結果が出ている、と。
国家プロジェクトではリチウムイオン電池よりはるかに高い目標を打ち出している。死に物狂いでやっており、多分数年後に達成できる。ただ、それを実用の電池に展開していくには別の課題がある。
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