「トライアド」(三本柱)と呼ばれる電気自動車、ライドヘイリング、自動運転車の融合は、実現にはまだほど遠い。電気自動車が市場シェアでガソリン車に追い付くにはかなりの時間がかかるだろう。今後も、人々は自分の車を所有し、自分で車を運転したいと思うかもしれない。自動運転車の大規模な実用化は緒に就いたばかりだ。
それでも、この新たな融合の予兆と言える動き──提携、買収、投資──はすでに目まぐるしくなってきている。参加プレーヤーには、アップルやグーグルといった大企業のほか、新しいライドヘイリング会社や、既存のテクノロジー企業、ベンチャーキャピタリストの出資を受けるスタートアップ、大学、それにもちろん、将来も中心的な存在であろうとしている自動車会社が名を連ねる。
自動車会社がリスク回避的な理由
ラリー・バーンズの考えでは、伝統的な自動車会社は「移動革命」に対応するのが5年遅れた。
「自動車会社はハードウェアを作る会社だ」とバーンズは言う。「ハンドルや、ヘッドライトや、ドアの取っ手を設計している。そういう作業をすべて同じ建物の中で同時に行って、暑くても寒くても、夜でも昼でも、何十万キロでも走れる自動車を組み立てるのを得意とする。しかし、自動運転は基本的にソフトウェアとマッピングの問題になる。そのためにはたくさんのコンピュータコードを書かなくてはならない。それは自動車会社が得意とするところではない。自動車産業の動きが鈍かったのは、デジタル技術に精通していなかったことや、コンピュータやビッグデータに関する能力が足りなかったことが原因だ」。
ほかにも大きな要因があった。自動車メーカーは厳しい規制のもとに置かれており、へたをすると、莫大な罰金を科されたり、集団訴訟を起こされたりする。したがって、製品の特性上、どうしても用心深く、慎重になり、リスク回避的になる。
「数年前、あちこちで『この戦いではテクノロジー企業が勝ち、古いプレーヤーが負ける──以上』という記事が書かれました」と、ビル・フォードは言う。「ですが、話はそんなに単純ではありません。車両アーキテクチャと頭脳部、つまり自動運転システムとを、適切に組み合わせる必要があります。一方を変えたら、もう一方も変えなくてはなりません。そうしないとミスマッチが起こります。2つをうまく連携させる必要があります」。
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