「アメリカでも若者の車離れ」自動車会社の岐路 自動車メーカー同士の競争を超えた新たな闘い

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「人間が、ある場所からある場所への物理的な移動を必要とすることは、これからも変わらないでしょう」とGMのメアリー・バーラは言う。「ですが、移動の手段は多様化します」。バーラが最終的に目指しているのは、「事故ゼロ、排出ゼロ、渋滞ゼロの世界」だ。彼女に言わせると、その世界では自動電気自動車が中心になるという。とはいえ、GMにとってそのような目標の実現はたやすいことではない。ほかの自動車メーカーと同様、毎年世界中で何百万台という車を販売していて、そのほとんどすべてが従来型の車──ドライバーを必要とし、石油で走る車──で占められている。

世界の大手自動車メーカーは生き残りをかけて、新しい移動の世界で地位を死守しようとするだろう。一方、中国やインドの自動車メーカーにとっては、世界に打って出てグローバルな企業になる道が開かれる。

しかし次の1兆ドル市場を探す大手テクノロジー企業が、ソフトウェアやプラットフォームの知識と豊富な資金力にものを言わせて、移動産業の盟主になるかもしれない。必ずしも製造ではそうならなくても、産業全体の覇者にはなりうる。現に、アップルは今もスマホを製造しているわけではない。

「オートテック」企業の誕生

ここから誕生するのが、自動車技術とITを組み合わせた「オートテック」と呼ばれる新しい分野の企業だ。自動車の製造から、フリートマネジメント〔商用車両の調達・運用・管理〕やライドヘイリングまで、垂直統合される場合もあれば、戦略的な企業連合が形成される場合もあるだろう。この新しい企業のもとでは、さまざまな能力──製造、データとサプライチェーンの管理、機械学習、ソフトウェアとシステムの統合、世界各地での品質の高い「移動サービス」の提供──が巧みに組み合わされることになるだろう。

今のところ、まだ、転換点には達していない。新しい技術と新しいビジネスモデルの恩恵が大きく勝って、石油燃料の自家用車という長年の支配モデルが廃れるという段階にはいたっていない。いまだに大量の車が自家用車として購入されているし、従来型の企業も営業を続けている。それに、エンジン車の燃費の大幅な向上という「帝国の逆襲」もありうる。

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