北朝鮮の恐喝ラブコールでもアメリカは応じない 強硬姿勢に転じた北朝鮮の思惑と行動の意味
経済難の克服に打つ手なし
――2021年末、朝鮮労働党中央委員会第8期第4回総会という重要な会議で、2022年の国家運営のあり方が議論されました。
同総会では新しいニュースはほとんどなかったが、2019年2月のベトナム・ハノイでの米朝首脳会談以降、ますます強くなっている北朝鮮の傾向が改めて確認されたとも言える。金正恩総書記は2012年からの政権初期に推進していた経済改革路線を後退させ、かつての金日成主席時代に行われていた中央計画経済を復元させようと努力している。そうした傾向が鮮明になっている。
だが、そのような努力にもかかわらず、北朝鮮の経済は軍需産業でない限り、急速に厳しくなっているという事実について疑う必要はない。もちろん、北朝鮮経済が悪化した主な理由は、新型コロナウイルス感染症に対する厳しい防疫措置とこれまでの北朝鮮に対する経済制裁だ。しかし、効率が低い中央計画経済を復元しようとする試みは、現状の経済難を解決するためには何の役にも立たない。
――金正恩時代になって始まった、企業や農場などに一定の権限を与え、現場の実情に応じた経営を可能にした「社会主義企業責任管理制」や、農業での「圃田担当制」といった、市場経済的な経済改革は尻すぼみになったのでしょうか。
北朝鮮が現段階で経済改革を再び行う可能性はほぼない。海外からの投資だけでなく、純粋な貿易までもが厳格な防疫措置と経済制裁でほぼ不可能になっている。こうなると経済改革を進めることは難しい。と同時に、金総書記をはじめ北朝鮮の指導部は、思想による国民動員と国家による統制という2つの力を改めて信じるようになっている。
一方で、1990年代後半に起きた、餓死者を出したほどの経済難、いわゆる「苦難の行軍」は発生しないと思う。それは、中国のおかげだ。
中国はアメリカと対立を深めるなかで、朝鮮半島の北部を非常に重要な緩衝地帯とみなしている。いま北京は、北朝鮮で政治危機を引き起こしかねない経済危機を予防する能力と意思の双方を持っている。それは、そうする必要があると強く考えているためでもある。言い換えれば、北朝鮮経済が1990年代のように事実上のマヒ状態に陥ったとしても、中国が必ず支援するため、餓死者が出るほどの状態にはならない、ということだ。
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