北朝鮮の恐喝ラブコールでもアメリカは応じない 強硬姿勢に転じた北朝鮮の思惑と行動の意味

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――金総書記は総会で、「経済発展5カ年計画の初年度において、経済的に成果を残した」と言及しました。

北朝鮮の国内外の状況とこの国の長年の伝統を考えれば、北朝鮮当局が「成果」を発表しないことは想定しにくい。北朝鮮がかつて元日に発表してきた「新年の辞」や「共同社説」は、いつも「前年には大きな経済的成果があった」と主張していた。甚だしくは、数十万人が餓死した「苦難の行軍」時代にも、このような主張があった。

もちろん、2021年に北朝鮮の経済が依然として稼働・機能していること、それ自体が成功だといえるかもしれない。現在のような困難な状況で、北朝鮮の労働者や技術者、経営者は依然として基礎的な物質を生産しただけでなく、日本や中国、アメリカを脅かす最新兵器の開発・生産についてもある程度成功している。

しかし、客観的にみれば2021年は金正恩時代で成果が最も少なく、かつ厳しい年だったと言える。2021年の北朝鮮経済がマイナス成長だったことはほぼ確実だ。平壌総合病院建設をはじめとするさまざまなプロジェクトは、繰り返し宣伝扇動してきたにもかかわらず、完成させることはできなかった。

ただ、1つ強調したいことがある。北朝鮮経済の厳しい状況は、単に北朝鮮指導部の無能さを示すものではないということだ。非常に有能な経済専門家であったとしても、今のように厳しい国内外の状況では、北朝鮮で経済成長を成し遂げることは事実上不可能だ。それにもかかわらず、2021年の経済的な業績を発表したのは、純粋に政治的宣伝にほかならない。

相次ぐミサイル発射はアメリカへの圧力

――2022年になり、北朝鮮は相次いでミサイルを発射しています。北朝鮮が元々計画していた試験発射だと思いますが、対話を求めるためにアメリカに圧力を掛けているという見方もあります。

ミサイル発射を繰り返しているのは、アメリカに対する圧力の手段だと見ている。それについて述べる前に、まずアメリカの北朝鮮政策の構造と論理について簡単に話したい。

北朝鮮の核問題が発生したために、アメリカでは北朝鮮に対する関心がある程度持たれるようになった。しかし、概して言えば、アメリカの対外政策において北朝鮮問題はとても周辺的な問題に過ぎない。つまり、アメリカの対外政策において北朝鮮問題は1等級でもなく2等級でもなく、3等級の問題だということだ。

トランプ前大統領は在任当時、初の米朝首脳会談を行うなど北朝鮮に関心を示したようだが、それは本人が北朝鮮の核問題をよく理解できなかったため楽観主義が支配し、北朝鮮の核問題を最重要問題として捉えて行動した。しかし、トランプ大統領のそういった態度は、アメリカの大統領としては例外中の例外だった。

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