バイデン政権「北朝鮮政策」が何とも不明瞭な真因 関係各国の思惑が複雑に影響し合っている
北朝鮮とアメリカとの交渉再開に関する憶測が再び流れている。米高官が北朝鮮からの「興味深いシグナル」について語る一方で、北朝鮮側は「そうはいかない。何を提供してくれるかだろう」とすかさず言いたげだ。新たにアメリカの北朝鮮特使に任命されたソン・キム氏は、ソウルであたかも王族が訪問したような歓迎を受けている。
これはバイデン政権待望の北朝鮮政策の始まりなのか、それとも対話の前触れなのだろうか。
中国戦略はあるが、北朝鮮戦略はない
状況から察するに、また複数の米韓高官との取材に基づくと、現実にはアメリカ政府に北朝鮮政策がないことは明白である。あるのは中国政策であり、中国に対する広範な戦線を構築するために同盟関係を強化することが優先されている。
朝鮮半島に関しては、バイデン政権は韓国を同盟陣営にとどめることに注力している。政府高官は、北朝鮮との交渉で得られるものはほとんどないという結論で検討を終えた。高官らは、北朝鮮が用意できるのは、ドナルド・トランプ前大統領と北朝鮮の金正恩委員長の間で失敗に終わったハノイ首脳会談で提示したもの、つまり、政権の存続を脅かす制裁を解除する代わりに、一部の核施設を限定的に凍結するというものでしかないと見ている。
北朝鮮研究の第一人者である国民大学のアンドレイ・ランコフ教授も、「アメリカは北との対話にそれほど興味がないだろう」と話す。
「話し合いで得られる結果は、『ハノイの妥協案』を洗練させたものだけかもしれないし、そうした取引きは、アメリカの議会、国民、メディアには受け入れられないだろう。そのため、バイデン大統領は、北朝鮮への対応では華々しい勝利は望めないことを十分に理解した上で、より重要な問題、とりわけ中国に集中したいと考えているようだ」
アメリカの対北朝鮮政策担当者のベテランもこの認識を共有しており、対北関与という目標に向かってほぼ無謀ながらも前進を試みる韓国の文在寅政権に対して、名目的な支援を行うことを主眼に置いている。
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