バイデン政権「北朝鮮政策」が何とも不明瞭な真因 関係各国の思惑が複雑に影響し合っている
北朝鮮側はどうか。北朝鮮では金委員長が今の情勢をよく読んでいるようだ。金委員長もまた、意図的に対話のドアを開いたままにしているが、そこには自分にとって「実質的な何か」がなければならないことを明確にしている。
一方金政権は、国内の半自由主義市場における基本財の異常なインフレを反映した、食糧不足などの深刻な内部問題を認めている。北朝鮮での新型コロナ蔓延に対する懸念は根強く、経済的影響が大きいにもかかわらず、政権は厳しい国境管理を続けている。これにより一部では、金委員長は、経済支援と引き換えに核・ミサイル開発を大幅に縮小するという、つかみどころのない取引きに応じるのではないかとの見方も出てきている。
侮れない中国というパズルのピース
事態がさらに悪化した場合、金委員長は安全弁として、強力な隣国であり条約上の同盟国である中国に頼ることができる。中国側も、「北朝鮮が不合理に厳しい検疫体制を緩和し、中国の援助を受けることを決めさえすれば、必要なだけの援助をしてくれるだろう」(ランコフ氏)。
北朝鮮と中国の関係は現在、好転しており、北朝鮮では同盟関係や朝鮮戦争での中国の役割を讃えるプロパガンダが盛んに行われている。一方、中国は朝鮮半島の非核化という目標よりも、同盟関係自体を重要視ている。バイデン政権が中国との対決を優先としていることもあり、中国側では北朝鮮を存続させる動機が一層強くなっている。
中国との関係が一段と強くなれば、北朝鮮は自国の要求を押し付けるために、ミサイルや核実験でアメリカとの緊張関係を煽ることはしづらくなる。もっとも、中国自体は北朝鮮の安全保障問題や、制裁解除についてはほぼ関心がない。
結局のところ、バイデン政権の「戦略的忍耐」は、オバマ政権の「戦略的忍耐」と同様に、つねに北朝鮮の現状維持の姿勢を前提としている。北朝鮮で火事が起きた場合、それはアメリカにも、韓国にも、日本にも飛び火する可能性があるのだ。
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