実は「寒いほど脂肪は燃える」冬に減量が有効な訳 コロナ太りは薄着になる前に解消できる…かも
「お店の鏡で自分の姿を見ると、服がずり下がってきてるの。顔もげっそりして、常連さんからはどうしたのって聞かれたわよ。ちょっと変だなって自分でも感じるときがあってね。急に何の前触れもなくほてりを感じたり……」
バーバラはしばらく様子を見ようと思っていましたが、翌月にまた1キロ落ちたので、かかりつけ医師の診察を受けました。しかし、彼女の身体の変化が何を意味するのか、医師もわかりませんでした。血液検査をしても変わったところはなかったのです。
そこで、代謝を速めているほかの原因がないかを調べるためにPETスキャンを受けたところ、すごいことがわかりました。
腰付近に、直径6センチほどの丸い塊があり、大量の糖を吸収していたのです。その塊が一体何なのか調べたところ、その物体は脂肪とミトコンドリアでいっぱいでした。良性の腫瘍で、それを構成していたのは褐色脂肪だったのです。
塊を除去すると、たちまち空腹感がなくなり、数カ月でなんと10キロも増量しました。バーバラの例から、多量の褐色脂肪が体内にあると急激に痩せられるとわかり、その「副作用」に科学者たちは胸を躍らせました。
バーバラの例はとてもまれです。一般の人の体内には、褐色脂肪細胞は300グラムしかありません。それでも、体のなかにすでに存在する褐色脂肪を刺激することで、代謝を上げることは可能です。
冷水に触れると褐色脂肪のスイッチが入る
ライデン大学医療センターのマリエッタ・ボンが所属する研究チームは、褐色脂肪が健康な人たちの代謝に与える影響を調査しました。若い男性たちを冷水が流れるマットの上に寝かせて、冷水に触れる前と後で代謝率を測定したのです。
その結果、2時間で男性たちの代謝率は1日200キロカロリーも上昇しました。つまり、残存する褐色脂肪のスイッチを「オン」にして可能な限り活発にすれば、1日に200キロカロリーを余分に燃やすことができるのです。
なぜ冷水に触れたことで、褐色脂肪のスイッチは「オン」になったのでしょう。ここに「寒さ」が関係しています。
人間の皮膚のいたるところには温度センサーがあり、このセンサーが、脳の視床下部にある温度センターに情報を伝達します。視床下部は脳の管制塔であり、入ってくるすべての情報を処理し、熱を作り出すべきか、熱を逃すべきか判断しています。熱を作らなければいけないときに、褐色脂肪のスイッチを入れるよう、脳から信号が送られるのです。
寒さにさらされて脳が褐色脂肪のスイッチを入れると、さまざまなことが一斉に起こります。例えば、脂肪から脂肪酸が分泌され、それが代謝の燃料として、褐色脂肪細胞内にあるミトコンドリアによって燃やされます。その結果、エネルギー豊富な物質を伴わず熱だけを産生することができるのです。