4万円超の値がついた「土偶ニット帽」誕生秘話 「縄文」界隈注目ヒットメーカーは元バンドマン
小牧野館のメンバーにも話をして、電話やメールでの対応をアンケートの機会に変えた。そのときに集まった意見を参考にして12月6日、価格は9900円、ハガキでの抽選という形で、購入希望の受付を始めた。
一気に2倍以上の価格にしたのは、「1万円までならなんとか」という意見が多かったことに加え、負担が大きいAさんへの支払いを増やすため。メールの先着順をやめてハガキでの抽選にしたのは、メールの扱いになれていない人たちへの配慮からだ。
9900円のニット帽を買うために、わざわざ63円のハガキを買い、必要事項を記入してポストに入れる人がどれぐらいいるのか? ビジネスパーソンは、ぜひ予想してみてほしい。
想像がつかなかった竹中は、手始めに24個で募集をかけた。すると、760通のハガキが届いた。年明けの1月5日、第2弾として36個の募集を始めたところ、今度は380通の応募があった。なんと、メールで受け付けした前回を上回ったのだ。この結果には竹中も仰天した。
「ヤフオクに出品したときに、『(遮光器土偶ニット帽は)普通の手編み作品ではなく、技術を伴う工芸品の域に達している』というメールをもらったんです。今回の結果を見て、確かにそういうことなんだと実感しましたね」
竹中たちの商品開発に終わりはない。昨年7月には小牧野遺跡PRキャラクター「こまっくー」のぬいぐるみ(3520円)が発売された。これも埼玉在住のテディベア作家と二人三脚で開発し、4回の試作を経て完成したものだ。
青森県知事もお気に入り
小牧野館のオリジナルグッズは青森県知事もお気に入りで、これまで何度も遮光器土偶ニット帽と遮光器土偶メガネを着用してイベントに登壇している。それでさらに認知度が高まり、コロナ禍以前には毎年30万人が訪れていた三内丸山遺跡のミュージアムショップに小牧野遺跡コーナーができた。また、昨年10月にはオリジナルグッズのネットショップ「こまてん」を開くなど、販路も広げている。
「うちも、お金に余裕があるわけじゃありません。でも、作ったものがコケなければ、ちょっとずつチャレンジできる。オリジナルグッズで、大きく外したことがないんですよ。ミュージアムショップやエスニック雑貨店の経験がすべて生きてますね」
竹中率いる小牧野館チームの取り組みはモノづくりベンチャーのようだが、最大のミッションは「縄文文化を身近に」。昨年7月には、「三内丸山遺跡」をはじめとした「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産登録が決定し、かつてないほど縄文文化に光が当たり始めた。その追い風のなか、竹中とスタッフはきっとまた世間をざわつかせる商品を生み出すのだろう。
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