4万円超の値がついた「土偶ニット帽」誕生秘話 「縄文」界隈注目ヒットメーカーは元バンドマン

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こうして2020年8月、小牧野館とCOOKIESのコラボ商品、遮光器土偶けん玉、名づけて「シャコケン」が誕生。これがけん玉愛好者の間で話題沸騰となり、1体4180円のシャコケンが瞬く間に売れていった。男女ペアで購入する人も多く、こちらはこれまで120個販売したという。

男女セットで売れるシャコケン(写真:小牧野遺跡保存活用協議会)

遮光器土偶サングラスもシャコケンも竹中の発案ではあるが、竹中にとって商品化に不可欠なのはいつもポジティブで、ノリのいい小牧野館のスタッフたち。できない理由を並べるのではなく、実現するためにどうするかを一緒に考えられる仲間の存在は、とても大きいと語る。

「うちのチームって、例えば僕が『なんか土偶に見えてきたんだよね、けん玉が』と言ったら、面白いって言ってくれるんですよ。さらに、もっとこうしたらいいんじゃないかってどんどんアイデアが出る。そういう風通しのよさもあって、自由な意見を言える雰囲気があるんですよね」

4回の試作を重ねたニット帽

この小牧野館チームが生み出した最大のヒット商品が、冒頭に記した遮光器土偶ニット帽。これは、竹中とスタッフが小牧野遺跡と世界遺産登録を盛り上げるために「こんなニット帽があったらいいよね」と雑談をしていたところ、後日、その話を聞いた外部の女性(仮にAさんとする)が「1回、編んでみようか」と言ってきたことから開発が始まった。

最初に編んでくれたニット帽は、今ほどクオリティーが高くなかったそうだ。そのサンプルを見て、竹中はエスニック雑貨の買い付けに行っていたとき、現地の商品を見て「もうちょっとこうすれば売れるのに」と残念に思ったことを思い出した。

それから、妥協なく遮光器土偶の「王冠状突起」に見えるものを作ろうと、Aさんやスタッフと何度も話し合った。そうして4回の試作を重ねた末に、全員が納得するニット帽が完成。これは話題になると確信した竹中は、ミュージアムショップで5個だけ販売し、残りはカラー指定もできるメールでの受注生産とした。

その反響は、想像をはるかに超えていた。冒頭に記したとおり、2020年1月25日、1つ4400円で50個発売したところ、SNSで話題になったのがきっかけで、約100通のメールが届き、わずか5日間で一度販売を中止することにした。

カラーバリエーションがある遮光器土偶ニット帽(写真:小牧野遺跡保存活用協議会)

2020年11月に発売した第2弾(約50個)では、1000人超が応募。このときは発売を告知した時点でメディアに取り上げられたこともあり、発売当日の現場は混乱に見舞われた。秒単位でメールが殺到したため、普段使用している3台のパソコンそれぞれに届いたメールの順番が異なっていたのだ。このときは、公平を期すためにサーバーに届いたメールの順番で先着を決めた。

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