4万円超の値がついた「土偶ニット帽」誕生秘話 「縄文」界隈注目ヒットメーカーは元バンドマン
「売れるグッズを作るしかない!」
気合い十分の竹中は1年目、スタッフと一緒に「堅く地味な縄文のイメージを変えよう」とアイデアを出し合い、小牧野遺跡の環状列石の配置をポップにデザインしたマスキングテープを考案し、早速商品化した。
それが「まあまあ売れた」ことが自信となり、2018年には小牧野遺跡のロゴマーク入りタイダイTシャツをリリース。そして翌年に投入したのが、遮光器土偶メガネだ。これも、竹中のひらめきがもとになっている。
竹中は、1980年代から90年代にかけて世界的な人気を誇ったアメリカのバンド、ニルヴァーナが好きだった。同じ時期にギター&ボーカルをしていたこともあって、特にカリスマボーカルのカート・コバーンには憧れていた。
それから時が流れ、小牧野館の館長になってから東京に行ったとき、原宿でカート・コバーンがよくかけていたようなサングラスを見かけた。それを目にした瞬間、電撃的に「遮光器土偶に似てる!」と感じたのだ。そのグラス部分に横一筋のスリットを入れたら、と想像すると、どう考えても遮光器土偶にしか思えなかった。
「スリット入りのサングラスを作って、遮光器土偶サングラスとして売ったら、かっこよく縄文をアピールできる! クールジャパン!」
made in 青森に
自分のアイデアに興奮した竹中は、商品化しようと方々に問い合わせた。それでわかったのは、竹中が求めるようなセルロイドやプラスチックのサングラスは中国で大量生産しているため、手間のかかる少数の依頼をするのは不可能ということだった。
諦めかけたところで、「木だったら作れるかもしれない」という会社と出合った。竹中がイメージしていたのはあくまでカート・コバーンのサングラスだったから、最初は「木製か……」とテンションが下がったのだが、スタッフに相談すると「木製のほうが縄文っぽいかも」という話になったので、サンプルを作ってもらうことにした。
それが思いのほか遮光器土偶っぽい出来栄えだったので、その会社と何度か試作を重ねた後、1980円で売りに出した。すると予想以上の早さで完売しただけでなく、新潟県立歴史博物館から「今度、土偶関連の企画展をやるからうちのミュージアムショップで売らせてほしい」という連絡がきた。それで10個ほど卸したところ新潟でも人気になり、新潟県立歴史博物館のフェイスブックページでも盛んに紹介された。
「これはいける!」と増産しようとしたタイミングで、製造してくれた会社が倒産。しかし、加工の設計図に関しては「ほかに請け負う会社があれば、渡してもいい」と言ってくれた。
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