お父さん犬から見る「家族崩壊論」の滑稽さ ソフトバンクのCMは「家族」の本質を表している

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犬は集団内での序列を意識して生きる動物です。しつけると人間の命令を従順に聞くのは、この特性のためです。「犬の権勢症候群」で面白いのは、犬が飼い主の家族内の順位を、空気を読んで感じ取っている点で、「自分は、偉そうにしているお父さんよりは順位が下だけど、その世話をしているお母さんよりは上」と考えていたりするのです。つまり飼い主の側も、当の犬も、互いに相手を「家族の一員」と見なしていることになります。ホワイト家族のお父さんの順位は、お母さんの下で、子どもたちの上ということになりますね。

ほかのペットも家族になりうるでしょうか? 猫は間違いなく家族の一員になりそうです。哺乳類以外だと、小鳥も人気。イグアナやヘビ、さらにはカメなど、は虫類・両生類もペットの仲間入り。金魚や熱帯魚など魚類も多くの人が飼っています。ですが、デメキンは「家族の一員」でしょうか?

そう思う人もいるでしょうが、さすがに金魚になると「家族とまでは……」とためらう人も多いはずです。だとすると私たちは、犬と金魚との間のどこかに「家族」の境界線を引いていることになります。

ハッキリしない「家族」の基準

ソフトバンクのプロモーションで大活躍する「お父さん犬」(撮影:尾形文繁)

「ダレが家族のメンバーなのか」というのは、実は学問的にも大問題です。「共に暮らす(共住)」「食事を共にする(共食)」「家計を共有する」「血縁と配偶関係を基礎とする」といった基準が出されるのですが、単身赴任中のお父さんや、学生でひとり暮らしをしている娘が家族なのだとしたら、共住・共食は条件になりません。共働きなら家計が別のケースもあるでしょう。血縁や結婚は不可欠な条件だとみなさんは思うかもしれませんが、そもそもペットの犬が「家族」なのだとしたら、血のつながりなど何の関係もなくなります

それを上手に表現したのが、ソフトバンクのホワイト家族です。上戸彩さんのお兄ちゃんはアフリカ系アメリカ人で、お父さんは白い犬。人種を別にすることで、血縁を越え、さらにお父さんを犬にすることで、実はペットと家族の関係にまで問いを開いています。

そして、職場ではお母さんは校長先生で、お父さんの上司。以前、批判した味の素のCMのような、女性を食事作りに結び付ける古いメッセージと比べれば、新しい男女のあり方に目配りがきいています。固定的性役割分業を強調するCMとは異なり、会社のイメージアップにもつながるでしょう。

「人種」どころか「種」まで越えた、何が何だかわからない、はちゃめちゃな家族を描いておいて、「家族割引」を強調する、というのは見事な広告戦略です。

上戸彩さんはこのCMが始まる何年か前に、「3年B組金八先生」で性別違和(性同一性障害とも呼ばれます)を抱える生徒役を演じたのですが、このCMでその悩みを相対化できたのではないでしょうか? なにせお父さんが、ある日突然、白い犬になってしまったのです。それに対して自分の悩みは、「しょせん人間の中での問題」にすぎません。性別なんて、人間が犬になることに比べれば、何億倍も簡単に越えられる壁であるはずです。

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