「ロボットに100%負ける人」は一体誰が作るのか 「どうせ無理」ばかり言う周囲の大人たちの害

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実際にロケットの授業ができることになって、教室へ行ってみると、その先生がすべて仕切るんですよ。「はい、この表を見なさい。部品番号を調べなさい。勝手なことをするんじゃない。まだ袋を開けるんじゃない」とか言っている。

僕は「先生、それはやめてください」とお願いしました。それから子どもたちに言いました。「みんな好きにつくっていいから。わかんなかったら、わかってそうな人に聞けばいいから。わかったら、わかってなさそうな人に教えればいい。たったそれだけです。予備部品を山ほど持ってきたから、好きにつくっていいよ」と。そうしたら、みんなどんどん勝手につくっていくんですね。

みんな「自分から飛ばしたい」

つくり終わったロケットを飛ばすときには、みんな「自分から飛ばしたい」と我先に並ぶんです。「風向きを見るために、ためしに1本飛ばしてみるね」と言って、1本、私が打ち上げます。時速200キロを超えるロケットがバーっと100メートル上空まで一気に上がって、それからパラシュートを開いてゆっくり降りてきます。それを見て、みんなの顔がまた曇っちゃうんですね。「あんな飛ぶとは思わなかった」と。そして「自分のはダメだ、絶対飛ばない」と言うんです。列も逆になってしまう。「君からどうぞ」と譲り合うんです。

でもね、飛ぶんです。飛ぶように、ちゃんと僕らが見ていますから。飛んだら、子どもの表情は変わりますね。そして、そのあと学級崩壊がおさまっちゃったんですよ。みんな仲よくなることができました。

(写真:不登校新聞)

結局、娘のクラスは、担任の先生ががんばりすぎたせいで、子どもたちが自分で考えるという主体性を、まるで失ってしまっていたのですね。おそらくそれが原因で、自分より弱い人をつくることで自分の自信を保つという、いじめの連鎖が起きたんだと思うんです。

次ページ比べて得る自信は苦しい
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