ところで、主要キャラクターが、シーズン途中で「ええっ?」という展開に陥る本作の意外性には、本当に毎度ながら思わず声を上げたり、声を失ったりで気が抜けない。視聴者の間では、次に“消える”のは、どのキャラクターか? さらには次に登場する新キャラクター&俳優は誰なのか?――といった予想は、シーズン途中から終了後は侃々諤々(かんかんがくがく)、メディアに出る情報をめぐってヒートアップする。
誰が次のシーズンまでサバイブできるのかといったドキドキ感、楽しみ方は、2000年代以降、米国TV界を席巻した『アメリカン・アイドル』に代表される、人気のコンペティションを行うリアリティショーに通じるものがある。本作における「この人はサバイブするはず」「この人は死亡フラグが立ったぞ」といった視聴者の予想を裏切るドラマチックな意外性は、基本的に台本がないリアリティショーの驚きに似ている。
SNSの影響でキャラクターが発展
もちろん、『ウォーキング・デッド』は視聴者が生き残るキャラクターを決めるわけではないが、たとえば、人気が出たダリルというキャラクターがいる。原作にはなく、お試し感があったサブ的な役どころだったが、クロスボウを武器とし、サバイバル能力に長けた孤高の異端児ダリルは、演じる俳優ノーマン・リーダスのワイルドだが繊細かつクールな魅力と相まって、シーズン1でファンの間で最も熱烈な人気が出たキャラクターとなった。そのためシーズン2以降では役割が大きくなり、主役級の存在感を発揮するまでになった。
来日したリーダスは「SNSなどでファンが呼びかけてくれたおかげ」と語っていたが、ダリルの熱烈なファンの声が、ダリルというキャラクターを発展させた最も大きな要因であることは確かだろう。つまり、その逆(評判の悪いキャラクターは番組から退場させられる)もありえるというわけだ。この手のヒット番組の舞台裏では、俳優もまた、自分のキャラクターが生き残れるか否かにドキドキしているのである。
もっとも、人気があれば番組はどんどんシーズンを更新していく米国TVドラマにおいて、脇役はもちろんのこと、シリーズ途中で主役級の人気キャストが降板して番組の顔が変わることも珍しくはない。マンネリ化の打破やテコ入れも含めて、メインキャストを入れ替えながら、ロングランして視聴者を飽きさせないように続けていくことは、米国ドラマの常套手段でもあるのだ。
『ウォーキング・デッド』は、アメリカではベーシック・ケーブル局AMC(『マッドメン』『ブレイキング・バッド』)にて放送しており、シーズン6の更新も決まっている。放送後に、スタッフやキャストが裏話を語るトーク番組『Talking Dead』も人気だ。また、2015年にはスピンオフ番組の放送も予定されている。
アメリカを筆頭に欧米では、ゾンビを題材にした変化球のドラマが次々と誕生している。TVにおけるゾンビもあの手この手といった感じで展開しているが、日本でも実写の和製ゾンビドラマ「玉川区役所 OF THE DEAD」が放送中だし、近年は日本でもハロウィーンが定着してきて、ゾンビ用の仮装グッズやゾンビをモチーフにしたハロウィーン限定商品なども少なからずある。ゾンビの仮装をした人々が集う“ゾンビウォーク”や各種イベントが、欧米を中心に日本でも見られるようになった。
世界でこれほどまでに流行する生ける屍=ゾンビとは、何のメタファーなのだろうか。人気の背景にある人間の深層心理も気になるところだ。
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