エボラ熱、日本の防御態勢は大丈夫か 空港で検疫しても入国後に発症する可能性

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汗や血液などの体液に触れると感染の可能性が高まるため、防護服が不可欠

「嘔吐、下痢などを繰り返し、最期は体の震えが止まらず、亡くなっていく」──。国境なき医師団の看護師としてシエラレオネに派遣された大滝潤子氏は、「エボラ出血熱」(エボラウイルス病)の恐ろしさを目の当たりにした。

WHO(世界保健機関)によると、10月17日時点での患者数は9000人を突破。感染が広がっている西アフリカ地域に加え、欧米でも発症者が出るなど、先進国に飛び火している。

11月4日に中間選挙を控えた米国では、野党・共和党の候補者から、西アフリカ諸国から米国への渡航禁止を求めるなど極端な意見が飛び出した。他方、与党・民主党は医療費削減を求めてきた共和党を批判するなど、エボラ対策が政争の具にすらなっている。

日本で発症者が出る可能性はあるのか。厚生労働省の中嶋建介・感染症情報管理室長は「低いがゼロではない。出る前提で対策を立てている」と語る。日本人にとっても、対岸の火事とはいえない状況になってきた。

患者の体液に接触すると感染の可能性

エボラウイルスは5種類が確認されており、現在、西アフリカで蔓延しているタイプの致死率は約50%。空気感染はしないが、患者の血液や汗などの体液に濃厚に接触すると、人から人へと感染する可能性が高まる。

未承認だが治療薬として期待される新薬は二つある。一つは米マップ・バイオファーマシューティカルが開発中の「ZMapp」。もう一つは富士フイルムホールディングス傘下の富山化学工業が開発した「アビガン」(一般名「ファビピラビル」)だ。

ZMappは特例で投与され、投与後に回復した例もあったが、死亡した人もいる。足元ではほとんど在庫がなく、効果と安全性を確認できない状況にある。

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