エボラ出血熱、日本発“特効薬”への期待 WHOの最新方針は肩透かし
西アフリカを中心に広がるエボラ出血熱による死者が、2000人を超えた。感染拡大に歯止めがかかる気配もなく、封じ込め策も後手に回っている。
エボラ出血熱には現在のところ、有効な治療薬がない。だが、まだ開発段階にある新薬の中で、"特効薬"候補として注目されているものが2つある。米国で開発された「ZMapp」と、富士フイルムホールディングス傘下の富山化学工業が開発した抗インフルエンザ薬「ファビピラビル(製品名アビガン)」だ。
このうちZMappは、8月上旬にエボラ感染者に投与され、いったんは回復が見られたものの結果的には死亡してしまったという経緯がある。ファビピラビルはまだヒトに投与されたことはないものの、その有効性が数々の論文で指摘されている。
ただ、日本発の“エボラ特効薬”が生まれるまでには、まだ時間も要しそうだ。世界保健機関(WHO)の専門家会議は9月5日、未承認薬の投与についての具体的な指針を示した。要旨は以下の通りだ。
1.エボラ出血熱に感染した後に回復した人の血液や血清を用いた治療法を優先的に考慮する
2.臨床試験中の2つのワクチンについて、安全性が確認され次第、感染国の医療関係者等に優先的に投与する
3.そのほかの開発段階にある治療薬については、有効性や安全性のデータがそろい次第、検討する
ファビピラビルはどうなる?
専門家会議後に開かれた会見で、ある記者は、「中国で開発されたJK-05という新薬は臨床試験も完了しているようだが、これについてWHOは議論をしたのか」と質問した。JK-05とは、9月1日付の中国紙『人民網』が、中国軍事医学科学院の微生物流行病研究所が5年かけて開発し、中国人民解放軍の審査に合格し軍隊特需薬品として認められたと報じているものだ。
この質問に対し、WHOのキーニー事務局長補は、「その薬剤は日本のT-705、ファビピラビルと同じ分子である。ファビピラビルについては議論を重ねた」と答えた。その上で、「ファビピラビルは確かに有望な新薬だ。ただし、培養されたエボラ出血熱ウイルスにおける有効性が、試験管内で示されただけである。投与の優先度を考えうるに足りるデータがそろい次第すぐに検討する」とも話した。
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