健康診断の「基準値ありき」にモノ申す

学会間の論争は、本質が抜け落ちていないか

今年4月、健康診断の「基準値」をめぐって論争が起きた。日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が発表した「新たな健診の基本検査の基準範囲」が、これまで使われてきたものと大きく異なっていたのが発端だ。

たとえば以下だ。

●血圧

日本高血圧学会

 →収縮期血圧130mmHg未満、かつ拡張期血圧85mmHgが正常域

人間ドック学会・健康保険組合連合会

 →収縮期147mmHg、拡張期94mmHgまでが基準範囲

●悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロール

日本動脈硬化学会

 →140mg/dl以上は高LDLコレステロール血症

人間ドック学会・健康保険組合連合会

 →男性72~178mg/dlが基準範囲、女性は年代別に区分けし、65~80歳については64~190mg/dlが基準範囲

これをマスコミ各社が「正常範囲の基準が緩和された」などと大々的に報道。「『健康』基準広げます 人間ドック学会 血圧や肥満度」(朝日新聞)などの見出しが躍った。

日本高血圧学会、日本動脈硬化学会などの専門学会は相次いで見解を発表。日本動脈硬化学会が「人間ドックの目的である疾病予防を目指す基準値を定めるという姿勢が取り入れられていない。国民の健康に悪影響を及ぼしかねない」と指摘したほか、日本医師会と日本医学会は「多くの国民に誤解を与え、医療現場の混乱を招いており、拙速だ」と厳しく糾弾した。

実は、今回の騒動と同じようなことが4年前にも起こっている。「コレステロール論争」と呼ばれたものだ。

学会間の激しい論争に発展

2010年9月、日本脂質栄養学会が「長寿のためのコレステロールガイドライン」を発表。「コレステロール値は高いほど長生きする」という、従来常識を真っ向から覆す内容で報道が過熱。通院や服薬を中止する患者が現れ、治療現場は大きな混乱を来した。

上記のとおり、日本動脈硬化学会は140mg/dl以上を高LDLコレステロール血症と定め、コレステロールの中でもLDLコレステロールが高いと心筋梗塞や脳梗塞になりやすいとしている。

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