なぜ監督は「香川1区」の選挙戦を映画にしたのか 小川議員を撮り続けて17年、大島新監督に聞く

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多くの人たちは、小川議員の真っ直ぐな姿勢に「やはり政治家は志が大切なのではないか」と心を打たれたのかもしれません。そして、「なぜ日本の政治家は小川議員のようになれないのか」と感じたようでした。

香川県・高松市と小豆島などの島嶼(とうしょ)部で構成される香川1区で、選挙区の有権者は約31万人いる © 2022 NETZGEN

――今回も小川議員を追っていますがそのきっかけは何だったのでしょうか。

2020年9月に新しい立憲民主党ができた時に、小川議員を代表選に推す声があったのですが、選挙区で敗退し、比例復活当選しかしていないという理由で名乗りを上げませんでした。そういう意味でやはり2021年10月の選挙は、小川議員にとって大きな意味を持つものでした。

また、対立候補の自民党の平井議員も2020年9月のタイミングで菅義偉内閣の看板とも言うべきデジタル改革担当大臣に就任し、注目される存在となりました。

そして、何よりも今回の映画製作の大きなモチベーションは「自民党の強さを知りたい」というものでした。そこをきちんと描ければ日本中にあるであろう「香川1区」的な構造が見えてくるのではないか。そこで、今回は対立候補の平井議員、日本維新の会の町川順子候補も取材をすることにしました。

地方の有権者の投票行動

――都市部は人材の出入りが激しいのでマスメディア等の影響を受け、例えば大阪における維新の会の候補者たちの当選のように逆転現象が起こりやすいと感じますが、地方の有権者は「ここで生きていく以上は今まで入れていた自民党に入れなければ」という思いが強いと思います。

確かに、そういう傾向は香川1区にもありました。小川氏を応援している人たちは「自分の意思」で応援しているので、取材も「個として」向き合ってくれています。一方、平井氏の支持者の方々は会社の命令など、「何らかの事情」で自民党に投票している方が多く、取材も難航しました。

日本維新の会から香川1区に出馬した町川順子候補。作品の中では小川議員の「取り下げ要請騒動」についても描いている © 2022 NETZGEN

私のような外部の人間の立場であれば「それはおかしいのではないか」とすぐに言えますが、地元の人たちはそうは言えない。取材を受けていただけなかったことも含めてそのことは感じました。

平井氏に投票する人は「平井さんだから入れるわけではなく、自民党だから入れる」という人が多かったです。逆に小川氏に投票する人は「小川さんは好きだけれども立憲民主党が嫌い」という人が多かった。平井氏の支持者は「人より党」、小川氏の支持者は「党より人」という見事なコントラストがありました。

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