燃え殻氏が振り返る「1995年と今」の決定的な違い 「ボクたちはみんな大人になれなかった」の真意
「みんなの富士山」がなくなった2020年代
――1995年から現在までの時代の変化が克明に描かれていますが、改めて振り返ってみてどのようなことを感じましたか。
2020年の新宿から物語が始まりますが、誰もいませんよね。七瀬を演じた篠原さんが、「あんなに人がいない新宿で森山未來さんと撮影できたことは一生の思い出です」と言っていました。緊急事態宣言下で撮影したそうですが、どこまでも人がいなかったですね。
行き先を目指してたくさんの人が歩いていた1995年と誰もいない新宿。これが一番の変化だったのではないでしょうか。小説はコロナを描いていませんが映画は描いています。街の風景は一変してしまった。これが1995年と今との一番の変化ではないでしょうか。
――映画には当時大人気だった映画のウォン・カーウァイ監督の『天使の涙』(1996年)やファッションブランドの「NICE CLAUP」が映っていました。今は映画もファッションもそれぞれが好きなものを追い求め、好みが細分化し、「流行」がなくなってしまったように感じます。
それは音楽も同じですよね。僕らの時代にはみんなが憧れて聴いている「富士山」みたいな人気アーティストがいました。「あれが富士山だよ。高いねぇ」と。ところが、今は心の中にそれぞれの富士山があります。
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