燃え殻氏が振り返る「1995年と今」の決定的な違い 「ボクたちはみんな大人になれなかった」の真意
ミュージシャンもお笑いも、爆発的に人気のある人がいる、というよりは「オレの好きな」「私の好きな」という枕が付くようなアーティストが多くなったと思います。
――主人公の2人は雑誌の文通欄で知り合い、好きな音楽の話で盛り上がって恋人同士になります。「感性」で引かれ合う若い2人が輝いて見えました。
今のようなマッチングアプリでの出会いと異なり、文通での出会いは、知り合うときには容姿がわかりません。文通は容姿がわからない人と手紙のラリーをすることなんです。それはそれで情緒がありました。
香水やお香の匂いが付いている手紙が送られてくることもありました。ひょっとしたら相手がおじさんかもしれないのに……。
でも、それを確かめるために、証明写真や似顔絵を入れてくださいとは手紙に書けません。実際に会うまでのドキドキ感がすごかったです。
恋愛のスピード感が違う
――今、20歳に戻れたらどうしますか。
今の自分の精神状態で体だけ20代に戻ったらもちろんマッチングアプリをやります。文通みたいなまどろっこしいことはせずに、絶対にアプリを選びます。
当時は「文通とマッチングアプリ、どちらをやりたいですか?」という問いは成立しません。
当時の知り合いも少ない、お金もない、自信もない自分が、女性と知り合うには、「文通やるかやらないか」それだけでした。きっとそれだけじゃなかったはずですが、それくらいしか思いつかなかった。
――選択肢が少なかったのでしょうか。
そうです。ただ、当時の自分が10代後半から20代、Tinderを利用できると言われたらやれないような気がします。やはり目的が直接的すぎてハードルが高く感じてしまう。
主人公の佐藤のように、円山町のホテル街で「一番安いホテルを探して歩く」という状態でTinderを利用できるかと言われたらできないですよね。そうなると「アルバイト雑誌で文通相手をみつけるか」となるわけです。
――今は「男女の出会い」に特別な感覚はなくなっているような気がします。一方で、女性に興味がない若い男性の話もよく聞きます。
Uberみたいな感覚かもしれません。アプリで探して仕事の帰りに「会いに行くか」と。僕たちの世代にはない感覚です。それを見て「羨ましいな」と思うときもあります。お悩み相談の仕事もしていますが、僕たちの世代と今の若い人たちとでは恋愛のスピード感が違うんです。
僕たちの頃は、合コンは果たし合いみたいなものでした。合コンがあると2週間ぐらい前から「今度合コンがあるんだ」と友達に自慢していました。そのためにわざわざ洋服を買いに行ったりもして。女性と出会うことが特別な時代でした。
でも、今の若い人は、マッチングアプリなどで簡単につながれてしまう。出会いがあふれすぎてますよね。
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