なぜ監督は「香川1区」の選挙戦を映画にしたのか 小川議員を撮り続けて17年、大島新監督に聞く

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――平井陣営は、期日前投票が終わった後、平井氏に入れたかのチェックもしていましたね。

平井陣営が「投票チェック」を行っているとの噂があったので取材をしました。実際に期日前投票所から付近のビルに人が吸い込まれていく姿を見て、最初は「ある特定候補に投票することを強制する」ということに対して怒りを感じました。

しかし、ビルから出て来た人に話を聞いてみると悪気はありません。会社から言われたので来た、ただそれだけです。

一方で、劇中に登場しますが、平井陣営が1人2万円のパーティー券を10人分購入してほしいと依頼しておきながら、3人しか出席できないルールを設けていることを告発してきた隠れキリシタンのような人もいます。この場合、7人分のパーティー券代は寄付となる。それを明示すべきではないかと。

思いがあって小川氏に入れる一票も会社に言われて平井氏に入れる一票も、そして、パーティー券のあり方に不信を抱いている人の一票もすべて「同じ一票」なんです。

この映画の主人公は、客観的には候補者3人です。ただ私の中では、真の主役はやはり有権者でした。小川さんを熱い気持ちで応援する人も、会社の指示に従って平井氏に投票する人も同じ有権者です。この事実をどう受け止めるのか。そのことをずっと考えていたような気がしますね。

異なる聴衆への訴え方

――劇中の街頭演説で、平井氏は「小川氏(立憲民主党)は理想だけを述べ、自分(自民党)は政治家としてやるべきことを実践している」と主張していました。

平井氏の選挙演説は、前半はひたすら「デジタル」を連呼し、デジタル庁での実績をアピールしていました。それが後半から「選挙に勝ちたければ映画を作ればいいのか」というような小川氏への批判に変わったように感じましたね。デジタル庁の仕事で忙しく、選挙戦への取り組みが遅くなった焦りもあったのかもしれません。

そもそも平井氏の演説の聴衆は、通りがかりの人たちなのか、もしくは会社などの組織から命じられてきている動員なのかはわからなかったのですが、ほとんどがスーツ姿の人たちでした。

ちなみに高松三越前での街頭演説では、演説が終わると聴衆は平井氏が社長を務めていた西日本放送の社屋に吸い込まれていきました。そもそも平井氏は、街頭演説よりも「個人演説会」という形式をとって、閉じた空間で有権者と接触を持つことで票固めをしていました。

一方で、小川氏は「青空対話集会」と題して、選挙区を自転車で回って世代を問わず1人ひとりと対話していました。この差は大きかったように思います。

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