「スパイダーマン」大ヒットを喜べない人々の事情 今後「大人向けの映画」が衰退しかねない恐怖

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トム・ホランド主演の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』がついに公開(写真:Axelle/Bauer-Griffin/Getty)

全世界で爆発的にヒットしている映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(以下、スパイダーマンNW)』が、ついに日本でも公開した。北米公開直後の観客満足度調査でめったに出ない「Aプラス(過去には『アナと雪の女王』『アベンジャーズ/エンドゲーム』などが獲得)」を獲得した今作が日本でも成功し、すでに偉業とも言える数字をさらに伸ばすのは間違いない。

「スパイダーマン3部作」の最終作

スパイダーマンはマーベルコミックの人気キャラクターながら、マーベルが自分たちの映画スタジオを立ち上げる前に、ソニー・ピクチャーズが映画化権を取得していた。そのためホランド主演のバージョンは、ソニーとマーベル・スタジオのコラボレーションで製作され形だ。

2作目『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の後、金銭面でソニーとマーベルが揉め、一時は3作目の製作が危ぶまれた。しかし、お互いどこかで我慢を強いられても、ふたたび組んだ価値があったということだ。

彼らも十分それをわかっており、ソニーとマーベルはすでにスパイダーマンの次作に向けて動いている様子。マーベルのトップのケビン・ファイギはNew York Timesのインタビューで、「ここからストーリーがどこに行くのか、ソニーとマーベルは熱心に話し合いをしている。スパイダーマンが終わってしまったとファンが悲しむことは避けたいから、今、こうやってはっきり言うんだ」と語っている。

主演のトム・ホランドとゼンデイヤ(写真:Getty/Axelle/Bauer-Griffin)

ファンにとってはもちろん、それは興行主にとっても嬉しいニュースだ。コロナ禍で映画館は存在を危ぶまれていたが、『スパイダーマンNW』は、観客はまだ映画館で映画を観たいのだということを証明してくれた。

この勢いで続編をすぐにでも作ってくれというのが興行主の願いだろう。しかもソニーは、その前にも彼らに素敵な贈り物をしている。ディズニーはDisney+、ワーナー・ブラザースはHBO Max、ユニバーサルはPeacock、パラマウントはParamount+を抱える中、自社の配信サービスを持たないソニーは、パンデミックでよく使われるようになってきた同時配信という戦略を取らず、最近の『ヴェノム/レット・ゼア・ビー・カーネイジ』や『ゴーストバスターズ/アフターライフ』も、劇場のみで公開した。そしてそのどちらもヒットしたのである。

そう聞くと、映画館ビジネスの未来に希望を感じるかもしれない。だが、話はそう単純ではない。主に若者をターゲットにしたこれらの大作の成功が目立つ一方、同時期に公開された大人向けの作品は軒並み期待はずれの結果となっているのだ。

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