「スパイダーマン」大ヒットを喜べない人々の事情 今後「大人向けの映画」が衰退しかねない恐怖

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たとえば、スティーブン・スピルバーグの『ウエスト・サイド・ストーリー』。名作ミュージカルのリメイクであるこの映画は、レビューサイトRottenTomatoes.comによれば93%の批評家が高評価。クリティックス・チョイス・アワード(CCA/旧・放送映画批評家協会賞)にも作品、監督部門を含む11部門で候補入りした。それにもかかわらず、現在までの世界興収はわずか3700万ドル。推計1億ドルとされる製作費を回収するのは難しそうだ。

同じくアワードシーズンで健闘しているウィル・スミス主演作『ドリームプラン』も評判は高いが、世界興収は2600万ドルと冴えない。ギレルモ・デル・トロの『ナイトメア・アリー』も、まだ限定公開中とはいえ、北米で500万ドル程度でしかない。

なぜ良質な映画を作っても儲からないのか?

不振の理由として考えられるのは、アメリカでコロナが収まらない中、映画館に行くことに抵抗を感じる大人が多いのではないかということだ。

平常時ですら、大人は若者のように「話題作は絶対、公開初週末に観たい」とは思わない。大人は忙しいから、自分に都合のいいタイミングで観る。だから大人向けのシリアスな映画の場合、若者向け映画のように、公開直後に大きな数字を出して翌週に大きく落ちる、ということはなく、緩やかなペースで興行成績を伸ばしていく。

オミクロンでまたコロナ感染者が増えている今、大人にとって「都合のいいタイミング」は、これが収まった時。評判の良い作品は配信にも多く揃っている。彼らが観るものに困ることはない。

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