また、百貨店には、いわゆる「場所貸し業」という特有のビジネスモデルがあります。販売業者は、百貨店に商品を置かせてもらうことで収益を伸ばしていますから、百貨店のほうが販売業者より力が強い傾向があるのです。商品によっては、先に百貨店が仕入れるのではなく、売り上げが出た時点で、百貨店が仕入れるという形態のものもあります。つまり、売れた分だけを仕入れているということです。この場合は、まったく資金負担がかかりません。
いずれにしても、百貨店は、販売業者に仕入れ分を支払う期間を延ばすことで、ファイナンスをつけることができるというわけです。
売り上げは微減だが、コストカットで増益となったH2O
続いて、H2Oの平成27年3月期 第1四半期(2014年4〜6月)の決算内容を見ていきましょう。
損益計算書(7ページ)から業績を調べると、売上高は前年同期より1.4%減の1279億円と、微減になりました。こちらも、三越伊勢丹と同様、時計や宝飾品などの高額商品が落ち込んだのです。
ただ、H2Oは消費増税の影響を見越して、コストカットに取り組んでいました。売上原価を少し抑え、売上総利益はほぼ横ばいの356億円。販管費も若干ですが減少したことで、営業利益は7.2%増の28億円と微増になりました。
貸借対照表(5~6ページ)から自己資本比率を計算すると、40.8%ありますから、安全性には全く問題ありません。
H2Oが受けた消費増税の影響は、自社努力によって回避したと言えます。ただ、今回の増税は乗り越えられたと思いますが、来年10月には、高い確率で消費税率10%への引き上げが行われるでしょうから、収益の確保が一段と難しくなることは間違いありません。
利益確保に苦しむ百貨店、今後はどうなる?
百貨店業界の先行きについて、私は非常に懸念していることがあります。この業種は、売上高営業利益率が非常に低いため、中長期的に存続していうのは難しいのではないかということです。
例えば、三越伊勢丹の売上高営業利益率(営業利益÷売上高)を計算しますと、2.2%。H2Oは2.3%です。いずれもかなり低い水準だということが分かります。
ちなみに、小売大手のユニクロを傘下に持つファーストリテイリングの売上高営業利益率は、12.5%です。これと比較すると、同じ小売りでも百貨店の利益率が非常に低いことが分かります。
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