若い私を感激させた、「きみの声を聞きたい」

人間は誰しもが、無限の価値をもつ存在である

昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部)

 

松下幸之助から呼び出しがあり、出かけることが、側で仕事をするようになって、次第にその回数が増えていった。5~6年ほど経つと、土日、休日も含めて、毎日のように電話がかかってきて、出かけるようになった。

「いまから、来れるか」

経営を任せられるようになっても、その呼び出しは、変わらなかった。呼び出される時間は、平日の場合、早朝とか夕方だった。朝早いときには、4時前後に電話がかかってきた。「いまから来い」という。電車の始発を待って出かけた。行くと、松下は、ベッドに横になっている。起き上がって、洗顔し、ご先祖のご位牌に手を合わせ、下村海南に教えてもらったという軽い体操をしていた。それから、朝食をともにしながら、話をしつつ、仕事の指示、確認、雑談となる。

夕方のときには、「いまから、来れるか」と4時ごろ、電話が入る。準備をして、7時に行くと、ソファに腰かけて待っていてくれた。夕食をしながら、仕事の話、報告などをする。政治、経済、あるいは松下の、そのとき、考えたこと、思い、あるいは、尋ねると、昔の話をしてくれたりした。

そうこうしているうちに、9時になると、NHKの「ニュースセンター」(当時)が始まる。必ず「江口君、ちょっと横になるわ」と言って立ち上がる。そこで私が「では、これで失礼します」というと、ベッドに行きかけた松下が振り返って「きみ、これから、なんか予定があるのか」と言う。「いや、別にありませんが、ご迷惑でしょうから」と答えると、松下は決まって「わしは、構へんで」と言った。

そう言われては、帰ることもできず、そのまま、ベッドの横の小さな丸椅子に腰かけて、一緒にテレビを観ていた。観ながら、松下が、いろいろとニュースの感想を言ったり、またときに、いまの言葉はどういう意味かとか、きみはどう思うかなど、雑談めいた話をする。そういうことで、結局は、夜の11時、ときに12時を回ることもあった。

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