大量エントリーができても、企業が出せる内定の数は同じだ。そこでCMなどで知られる有名企業へ人気が集中し、高倍率化している。『就職四季報総合版』の最新データ(2023年卒版)によると、雪印メグミルク482倍、東宝420倍など、高倍率の企業は多い。
新型コロナウイルスが流行する前は、JTBやH.I.Sなどの旅行業、JAL、ANA等の航空会社、そしてオリエンタルランドなどテーマーパーク施設も就活生の人気企業ランキング常連だった。また、学生に知ってもらうため、エントリーが集中する時期にCMを出す企業も出てきた。
情報格差が生まれだす2010年代
大量に応募が届く有名企業は、選考に大量のリソースを割かねばならない。一方、就活生は高倍率の企業に落ちる前提、「ダメ元応募」を強いられる。
<有名企業ばかり倍率が上がる、一斉応募は非効率ではないか?>
そう、疑問を抱いたのは、企業や就活生だけではなかった。就活情報サービスの「外資就活ドットコム」などをはじめ、高学歴や外資志望者など、限られた層へアプローチするサービスが生まれ始めた。
「就活生」と大卒の40万人をひとくくりにするのではなく、細分化されたニーズがあるだろう……という判断だ。この読みは当たり、学生たちの間から高い支持を得ている。外資就活ドットコムの運営会社、ハウテレビジョンも2019年に上場を果たした。
さらに、就活予備校ともいえる「選抜コミュニティ」が登場した。学生を面接などで査定し、優秀な学生のみ選抜して就活法を指導する団体だ。学生はクローズドな空間でマンツーマンの指導を受けられたり、エントリーシート(志願書)の添削を受けられたりする。トップ大学の生徒が集まりやすいこともあり、選抜コミュニティは都心部で人気となっている。
選抜コミュニティは、個人が善意で行っているケースもあれば、就活エージェント会社や就活サービス会社が運営していることもある。会社が運営する場合、学生は無料で指導を受けられることがほとんど。優秀な学生を輩出することで自社のブランドイメージを高められるからだ。
他方、このあたりから「都心部と地方の情報格差」が目立ち始める。選抜コミュニティを知っているのは、トップ大学の学生のみ。対して地方の学生は相変わらず、リクナビやマイナビからの一般情報にしかアクセスできない……。こうして、都心部の学生だけが有利になる状況が生まれつつあった。
それを加速させたのが、新型コロナウイルスの蔓延だった。
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