クローズドな世界に「バブル化する」就活戦線

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大学生はコロナ禍によって「就活情報・ノウハウの継承」を不可能にした。もともと、就活で登録すべきサービスは、上級生から下級生へ伝達されるものだった。「そろそろ、エントリーシートを書いたほうがいいよ。〇〇さんが添削してくれるから」「○○部なら、A社への内定枠があるらしい」といった、公にできない情報もやりとりされていた。

それがコロナ禍でオンライン授業になり、接点が途切れてしまった。そこでトップ就活生は、クローズドな空間でやりとりできるSlack(スラック)やDiscord(ディスコード)のようなアプリに頼り始める。これらはいずれもベンチャー企業などで採用されている、メールよりも気軽にやりとりできるチャットサービスだ。

SNSとは違い、知らない相手とも閉じた空間でやりとりできるため、公にしづらい選考情報も交換できる。最初は善意の社会人や大学の先輩らが立ち上げていたが、次第に就活サービスも採用しつつある。優秀な学生を閉じたオンライングループに囲い込み、そこでだけやりとりするわけだ。

今のところ、私が知っている社会人主催の大手グループとして、商社・外資志望の就活生が集まる「マルボク」や、学歴を超えた内定を目指す「ビハインドサロン」がある。完全無料から有料課金型サービスまで系統も幅広く、学生がそれぞれのコミュニティの中だけで情報交換している形だ。

こうなると、チャットサービスの「バブル」の外にはじき出されている学生には、就活情報が得づらくなる。これまでは会員登録さえすれば、トップ就活生と同じ情報を、地方の学生も得ることが可能だった。今後は選抜された学生のみが、バブルの中で就活情報を交換していく形によりなっていくはずだ。

バブル化したグループの課題

優秀な学生が集まるコミュニティの存在に期待はしつつも、他方で都心―地方格差の拡大に、警鐘を鳴らしたい。もしこれをご覧になっているあなたが、地方で就活を始めるつもりなら……今からでもバブル化したコミュニティを探してみてほしい。

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その際に、多額の会費を要求してくる場所もある。有料サービスに登録する前は、周囲へ相談することも自衛の手段として忘れないでほしい。また、善意を装いながら実際にはエージェントとして就活生を企業へ紹介し、紹介手数料を得るケースもある。

筆者が取材した前出2つのコミュニティでは現在そういった動きはない。だが、上記のような意図を持った団体が存在することにも注意したうえで、就活を賢く乗り切っていただければと思う。

ひとまず、こういった「バブル」に参加せず、公開情報だけでも就活を乗り切るために登録すべきサービスについては、筆者の『確実内定』にすべて記した。少しでもオープンな情報を使いこなすことで、まずは格差を埋めていただければと思う。

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