チョウチンアンコウの男は女に全てを捧げて逝く メスに寄生するオスはやがてメスと一体化する

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チョウチンアンコウの知られざる生態に迫ります(写真:おにちゃん/PIXTA)
生き物たちはみな、最期のその時まで命を燃やして生きている──。
数カ月も絶食して卵を守り続け孵化(ふか)を見届け死んでゆくタコの母、成虫としては数時間しか生きられないカゲロウなど生き物たちの奮闘と哀切を描いた『文庫 生き物の死にざま』が刊行された。同書からチョウチンアンコウの章を抜粋する。
前回:働きバチのあまりに儚い一生を私たちも笑えない(12月6日配信)

チョウチンアンコウの体についていた小さな生物の正体

「僕たちずっと一緒だよね」

「一生、離さないよ」

世の男たちは、甘い言葉を女性たちにささやくが、果たしてどれほどの覚悟があるのだろうか。

チョウチンアンコウは暗い海の底に暮らす深海魚である。

光の届かない暗い海の底で、頭から細長く伸びた突起物の先端についている発光器をほのかに灯して、小さな魚を呼び寄せて捕食する。この発光器が提灯(ちょうちん)を灯しているように見えることから、チョウチンアンコウと名付けられた。

深海に棲(す)むチョウチンアンコウの生態は、未だ謎に包まれている。いったいどのような生活をしているのか、どれほどの寿命なのか、すべては謎なのだ。

かつて、チョウチンアンコウの死体の調査が行われたとき、チョウチンアンコウの巨大な体についた小さな虫のような生き物が発見された。

不思議なことに、その小さな虫のような生き物の死体は、チョウチンアンコウの体の一部であるかのように一体化していた。この奇妙な生き物は、当初は、寄生虫かとも考えられたが、調査が進むにつれて驚くべきことが明らかとなった。

寄生虫のように体についていた小さな小さな生き物は、あろうことか、チョウチンアンコウのオスだったのである。

次ページメスが体長40cmにまで成長するのに対し、オスは?
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