ロケットがなぜ飛べるか「科学絵本」が伝える本質 揚力や推力を生み出す仕組みをわかりやすく解説

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冒頭に紹介したゴダードが「ロケットの父」と呼ばれるゆえんは、本書に説明されているロケットの原理で宇宙を飛べることに最初に気づいた1人だからです。しかし当時、彼が称賛されたかというと、残念ながらそうはなりませんでした。それどころか当時のニューヨークタイムズにこう書かれてしまいます。

100年前、あの大手新聞が伝えたこと

「ゴダードが作用・反作用の法則を知らず、真空では力の作用が働かないことを理解していないのは馬鹿馬鹿しい。高校で教わる程度の知識すら彼に欠けていることは明白である」

『ロケットかがく for babies (Baby University)』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

現代を生きる私たちは、当時のニューヨークタイムズのほうが間違っていることを義務教育で学んでいます。本書に記したように「ねんりょうが ごおぉぉぉぉって うしろへ とびだすと びゅーんって まえに とんでいく」のが作用・反作用の法則で、これこそが空気のない真空中でも前に進める理由です。もちろん100年前のクオリティーペーパーの記者にはわからなかったことも、みなさんのお子さんは簡単に理解できるでしょう。

ゴダードは、世間から冷たい目を向けられても子どもの頃の夢を信じ、くじけずに研究を続けました。そして世界初の液体燃料ロケットをつくり上げたのです。彼のロケットは宇宙には届きませんでしたが、現代のロケット技術の礎となりました。

ゴダードはこう言いました。

「昨日の夢は、今日の希望であり、明日の現実となる」

もしかしたら本書を読んだお子さんの描く夢が、学び続けるうえでの希望となり、将来、誰も成し得なかったことを現実とするのかもしれません。

小野 雅裕 NASAジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)技術者

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おの まさひろ

1982年大阪府生まれ。2005年東京大学工学部航空宇宙工学科卒業。2012年マサチューセッツ工科大学(MIT)航空宇宙工学科博士課程および同技術政策プログラム修士課程修了。2012年より慶應義塾大学理工学部助教。2013年より現職。火星ローバー・パーサヴィアランスの自動運転ソフトウェアの開発や地上管制に携わるほか、将来の宇宙探査機の自律化に向けたさまざまな研究を行なっている。阪神ファン。好物はたくあん。主な著書は、『宇宙を目指して海を渡る』(東洋経済新報社)。

ブログ: onomasahiro.net/
Twitter: @masahiro_ono

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