今年最大の経営バズワード「パーパス」の本質 「新しい資本主義」の先の成長モデルを考える
3つ目が「できる!」。単なる絵空事ではなく、社員、顧客、株主たちの共感と協働を生み出す力が、パーパス実現のカギを握る。
先述したソニーを筆頭に、パーパス経営の先進企業は、この3要件を見事にクリアしている。しかし大多数の企業は、創業の精神や美辞麗句を掲げるだけで、これら3要件を満たしきれていない。まずはホームページで、自社の企業理念をよく読み直してみてほしい。
パーパス実装への3つのステップ
では、どうすれば真のパーパスを実装できるか?
経営者の思い込みや経営スタッフの作文だけでは、真に駆動力のあるパーパスにはならない。いくつかの企業で、パーパス経営実現を支援した経験を踏まえると、3つのステップが必要となる。
まずパーパス策定プロセスそのものに、自社の多様な部門や階層を巻き込むこと。いわゆる「パーパス・ワークショップ」である。
そこでは、「顧客・顧客の顧客」「社員・パートナー」「社会(コミュニティー)、地球(ミライの子供たち)」という3つのカテゴリーごとに、どのような価値を提供したいかを、自由闊達に語り合う。
そのようなワークショップを重ねる中で、パーパスの原風景が浮かび上がってくる。それを自社ならではのこだわりと外部プロの視点を交錯させて編集することによって、パーパスが言語化されていく。
しかし、それではまだスタートラインに立っただけだ。共感の波を広げることによって、社内外にそのパーパスをいかに浸透させるかが、勝負どころとなる。
社内に向けては、「マイパーパスOne-on-One」が有効だ。社員とそのメンターが1対1で向き合い、自社のパーパスと自分自身のパーパスをすり合わせていくプロセスである。
その際には、「Will(自らのパーパス)―Can(自らの能力)―Must(自らの職務)」などのフレームワークを対話の補助線として活用することが効果的である。このプロセスを丁寧に展開することで、社員1人ひとりにパーパスが自分ごと化され、それぞれの現場で実践されていく。
より広くは、「パーパス・エンゲージメント」を実践する必要がある。社内に向けては、上記の「マイパーパスOne-on-One」と並行して、「パーパス・タウンミーティング」を経営トップ自らが継続的に行う、パーパス実践のベストプラクティスを表彰する、などといった打ち手を、重層的に繰り出していく。
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