今年最大の経営バズワード「パーパス」の本質 「新しい資本主義」の先の成長モデルを考える
そのような中で、資本、すなわちカネではなく、ヒトを基軸とした新しい成長モデルが注目を集めている。ただし、個人の「欲望」を起点とした欲本主義(グリーディズム)ではなく、人々の崇高な思い、すなわち「志(パーパス)」が駆動する「志本主義(パーパシズム)」をめざすものだ。
「パーパス」は今や、時代のキーワードとなっている。グーグルで調べてみると、パーパスという言葉が世界で検索された数は、この1年間で約40億回、昨年のほぼ10倍に跳ね上がっている。日本でも、パーパスを主題とした書籍や特集が矢継ぎ早に出版された。
手前みそで恐縮だが、今年4月に上梓した拙著『パーパス経営――30年先の視点から現在を捉える』は、そのトリガーの1つとなった。
その後、私はハーバード・ビジネススクールをはじめ、国内外で多くの講演会やウェビナーに登壇。NHKや日本経済新聞をはじめ、いろいろなメディアに取り上げられるなど、大きな反響を呼んだ。
2021年の日本の流行語大賞は、「二刀流・ショータイム」だった。もし、世界におけるビジネス流行語大賞があれば、「パーパス」は間違いなく、筆頭候補の1つになっていたに違いない。
まさに「パーパス元年」ともいうべき様相を呈している。しかし、多くの流行語は、あっという間に忘れ去られてしまう。そのようなことがないように、本稿では、パーパスの本質を、今一度しっかり見極めておきたい。
パーパスの基本的な考え方
パーパスは「目的」を意味する。ビジネスの世界では「存在意義」と訳されることが多い。自分たちはなぜ存在するのか? 自分たちは、どのような価値を生み出そうとしているのか?
筆者は、パーパスを「志」と読み替えている。「少年よ、大志を抱け」の「大志」である。「志」とは「士」、すなわち道を究める者の「心」と書く。
「会社」とは「カンパニー」の訳であり、カンパニーは英語で「仲間たち」のことだ。会社とは本来、「志を共感する仲間たち」の集団でなければならない。
欧米型の資本主義の下では、会社は「ミッション」を持たなければならないとされてきた。しかし、「ミッション」と「パーパス」は本質的に異質なものである。
「ミッション」は本来、神(例「ミッショナリー」)や上司(例「ミッション・インポッシブル」)など、外から与えられた「使」命である。それに対してパーパスは、心の奥底から湧き出てくる「志」命である。外発に対して内発、すなわち起点が真逆なのだ。
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