「パーパス」なきESGやSDGsでは、未来は拓けない 日本発の新たな経営モデル「志本主義」のすすめ
昨今、「パーパス」というマネジメント用語が注目されている。ミッション、ビジョン、バリューの上位概念として、「自分は何のために存在するのか」、そして、「他者にとって価値のあることをしたい」という信念を意味している。組織や企業の存在意義を問い直す言葉だ。
しかし、こうした考え方は、日本の企業が昔から「志」といった言葉で、強く持っているものだ。これからは、志に基づく顧客資産、人的資産、組織資産などの目に見えない資産をいかに蓄積していくかが経営のカギとなる。
このたび、日本を代表する企業のアドバイザーを長く務めてきた名和高司氏が、この「志に基づく経営=志本経営」について、歴史や思想に始まり、内外の企業事例、実践方法までをまとめた『パーパス経営』を上梓した。
以下では、昨今の高い評価を受けている企業の例を挙げながら、これからの企業経営にとって「志」を掲げることの重要性を解き明かす。
最近の元気な企業に共通する要件
ウィズ・コロナ環境が続く中、多くの企業が危機対応に追われている。その中で、危機をチャンスと捉えて、次世代成長に向けて大きく舵を切っている企業も少なくない。
これらの元気な企業に共通している成功要件が3つある。
第1に、新たな体験価値を提供していること。外出関連の需要が大きく落ち込む中、巣ごもり生活に合った新たな体験価値を提供できた企業は、大幅に売り上げを伸ばしている。
第2に、持続可能(サステイナブル)な社会をめざしていること。環境だけでなく、健康や安心といった社会価値を大切にしている企業は、顧客の支持を獲得している。
第3に、自社の志(パーパス)を基軸としていること。第1、第2の要件は、同業他社も模倣しやすい。自社ならではの思いを、いかに顧客とともに分かち合えるかがカギとなる。
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