「パーパス」なきESGやSDGsでは、未来は拓けない

日本発の新たな経営モデル「志本主義」のすすめ

具体例として、最近発表された2つの企業ランキングを取り上げてみたい。

1つ目は、インターブランド・ジャパンが2月末に公表した「日本企業ブランド価値ランキング2021」だ。トヨタ自動車(1位)、本田技研工業(2位)をはじめとするトップ10社の顔ぶれは昨年と変わらない。

しかしその中で、3社だけがブランド価値を増やし、ランキングを上げている。ソニー(4位から3位へ)、ファーストリテイリング(7位から6位へ)、任天堂(10位から8位へ)の3社だ。いずれも、上記3つの成功要件を満たしている。

いち早くパーパス経営を打ち出したソニー

たとえば、ソニー。本年3月期は初の1兆円超えの最高益となった。直接の成功要因は、プレイステーションを核としたゲーム事業や「鬼滅の刃」に代表される映画・音楽事業が、巣ごもり需要をわしづかみにしたことだ。上記の第1要件に見事に合致している。

名和高司(なわ たかし)/一橋大学ビジネススクール国際企業戦略専攻客員教授。東京大学法学部卒、ハーバード・ビジネススクール修士(ベーカースカラー授与)。三菱商事を経て、2010年までマッキンゼーのディレクターとして、約20年間、コンサルティングに従事。自動車・製造業分野におけるアジア地域ヘッド、ハイテク・通信分野における日本支社ヘッドを歴任。日本、アジア、アメリカなどを舞台に、多様な業界において、次世代成長戦略、全社構造改革などのプロジェクトに幅広く携わる。ファーストリテイリング、味の素などの社外取締役を兼任(写真:名和高司)

それに加えて、持続可能性を経営の主軸に据えていることも見逃せない。環境負荷ゼロに向けて取り組んでいることに加えて、CMOSセンサーなどによる安心・安全な社会の実現をめざしている。第2要件のベストプラクティスといえるだろう。

しかし、最もソニーらしさが際立つのが、吉田憲一郎CEOが2019年に「パーパス経営」を打ち出したことである。そこではソニーのパーパス(志)を、「クリエーティビティーとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」と定義している。

想像力と技術を両輪としていること、そして何より世界を「感動」で満たすという思いこそ、ソニーの創業以来のDNAが表出したものだ。これこそ第3の成功要件である。

しかも、これら3つの要件が、きわめて緊密に織り込まれている。たとえば、ソニーは世界各地で子ども向けにSTEAM(Science, Technology, Art, Math)教育のためのワークショップを展開している。

これは第1の顧客体験価値を編み出し、第2の豊かなコミュニティ生活を創造し、かつ、第3のソニーのパーパスそのものを体現している。世界中のソニー従業員が自らの「ソニー愛」を体現し、未来のソニー愛好者を作り出す活動といえるだろう。

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