「パーパス」なきESGやSDGsでは、未来は拓けない

日本発の新たな経営モデル「志本主義」のすすめ

同じゲームの世界でも、ランキング8位に躍進した任天堂は、独自のパーパスを掲げる。「任天堂にかかわるすべての人を笑顔にする」。ソニーの「感動(emotion)」に対して、任天堂は「笑顔(smile)」を世界にもたらす。コロナの下での「Nintendo Switch」と「あつ森」の大ヒットは、この思いが結実したものにほかならない。

これらの例が示すように、パーパス(志)を軸足とすることで、その企業ならではの未来を拓いていくことができるのである。

「習慣づくり」をパーパスに掲げるライオン

では、2つ目のランキングに目を転じてみよう。消費者庁が主催する「消費者志向経営優良事例表彰2020」だ。筆者は、2019年度よりこの表彰事業の座長を務めている。

3月15日に行われた表彰式で、内閣府特命大臣表彰に輝いたのはライオンである。同社は「愛の精神の実践」を理念に掲げ、創業から130年間ぶれずにオーラルケアの普及に邁進してきた。最近では、デジタル技術を利用して、歯ブラシにアタッチメントを付け、正しい歯磨きを子どもの生活に根付かせる取り組みを展開している。

第1要件のコロナ禍における顧客体験価値としては、衛生ソリューションとして「インフェクションコントロール」を提供している。第2要件のサステイナビリティー対策の一環として、フィルム容器のリサイクルを競合先である花王と協業することを発表したことも注目される。

しかし、何といっても圧巻は、同社が掲げるパーパスだ。「よりよい習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」。この「習慣づくり」という地道な活動にこそ、ライオンらしさが表れている。

同社のように、消費者におもねることなく、より健康な生活習慣の獲得に向けて消費者の行動変容を促していくことこそ、消費者志向経営がめざす姿である。表彰式で、同社の濱逸夫会長は、「今後も生活者と共創・協働を図り、継続して高い価値を生み出せる企業を目指していく」と語った。まさに愛の精神に基づくパーパス経営の実践である。

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