スバル「アイサイト」はこんなにも徹底している 生みの親に聞く先進技術の歩みと将来の可能性

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――では、ステレオカメラの現時点における弱点はどこでしょうか?

柴田:ステレオカメラのみならず、どのセンサーも万能ではありません。ただ、ステレオカメラの開発を続けて改めてわかったのは、人の眼が優秀であることです。

――夜間や雨天に、霧や雪、そしてある程度までは逆光にも対応できますからね。

柴田:ステレオカメラは前方にのみ装着しています。よって、人が頭を後ろに回して後方確認するような仕草はできません。この物理的な限界を突破するためには自車周囲360度のセンシングが不可欠です。そのためアイサイトでは「スバルリヤビークルディテクション」として車体後方左右にミリ波レーダーを追加し、さらに最新のアイサイトXではマルチセンサー化として車体前方左右にもミリ波レーダー追加しました。

最新型アイサイトXのステレオカメラ(2020年)(画像:SUBARU)

――これまで後方のみであったミリ波レーダーをアイサイトXでは前方にまで採り入れステレオカメラ+4つのミリ波レーダーで360度センシングを可能にしたわけですね。

柴田:はい。でもこれで競合他社さんに近づいたという状況です。この先に訪れる自動運転時代になるとセンサーを知能化させる必要があります。たとえばミリ波レーダーは水平方向のセンシングには優れていますが、上下方向のセンシングは物理的に不得意です。よって、物体の高さは正確にわかりません。自動運転技術には物体の大きさを正しく把握することが不可欠なので、より複雑な交通環境に対応するためには立体視が可能なLiDARが必要になってきます。

センサーの知能化=賢くする

――センサーの知能化とは、具体的にどんなことですか?

柴田:知能化=賢くするというイメージです。ステレオカメラのセンシングによって、前走車へ接近するとブレーキ制御を行い、白線を認識してレーンをキープ、前走車や停止車両への急接近には衝突被害軽減ブレーキを作動させます。最近では飛び出し事故にも衝突被害軽減ブレーキが掛けられるようになりましたし、それが夜間でも対応が可能に……。

このように、「できる機能」を追加したり、対応可能なシーンを増やしたりすること、これがわれわれの考える知能化です。

――アイサイトの作動状況が一目でわかる「アイサイトアシストモニター」はとても素晴らしいアイデアですね。

柴田:ありがとうございます。このアイデアは、アイサイトの開発部隊発ではありません。初代レヴォーグの開発責任者である熊谷泰典さんから、「こういった仕組みを取り入れたいのだが……」と直々にお話があり開発に結びつきました。

――アイサイトアシストモニターの搭載以前にも、アイサイトでのシステム状態をドライバーに伝えるHMI(Human Machine Interface/人と機械の接点)が搭載されました。これらは便利である反面、お客様に理解いただくには苦労もあったのではないですか?

柴田:かなり苦労しました。ADAの時代(1990年代)は、前走車追従機能であるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール機能)自体の認知度が低く、さらに表示方法も矢印を点滅させるだけと非常にシンプルでした。

開発部隊としては「これで十分伝わる!」と思って商品化しましたが、やはりお客様には伝わりませんでした。そこでイラストを使って自車を横向きに表示してわかりやすくしたのですが、「クルマはまっすぐ進んでいるのに、なぜイラストは横向きなのか」とのご意見が……。そこで、縦に表示して遠近法も用いて立体的に変更しました。ようやくここまできて自車がどう動いているのか、直感でわかっていただけるようになりました。

やはり瞬間的に目を落としただけで状況の判断がつかないと、お客様はメーターを注視(見続けること)してしまうので危険です。人間工学部隊の協力も得ながら、レバー方式の操作系統をステアリングスイッチに変更するなどして対応してきました。人間工学部隊には、われわれが熟知している法規や要件を伝えながら、操作系は共同で育ててきました。

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