スバル「アイサイト」はこんなにも徹底している 生みの親に聞く先進技術の歩みと将来の可能性

✎ 1〜 ✎ 79 ✎ 80 ✎ 81 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

――確かに台数ベースではミリ波+単眼カメラを組み合わせた先進安全技術システムが多いですね。

柴田:一方、ステレオカメラはひとつのセンサーで正確な距離計測と物体の把握が行えます。複眼立体視ですから細かいデータを同時に取得することが可能です。

またスバルでは、車両制御までステレオカメラだけ完結させています。つまり、距離や車速のデータなども外部には出さず、全部ステレオカメラシステムの中で処理していて車両側には制御データしか出力していません。よって、アイサイトを実車から取り外したところで、制御の核心には迫れないのです。

「今日の明日で満足する性能は出せない」

――いわゆるリバースエンジニアリングによる解析ができない、ということですね。

柴田:はい、そうなります。ステレオカメラを用いた先進安全技術の開発は本当にむずかしく繊細で、今日の明日で満足する性能は出せません。ここがマイナーである大きな理由です。

最新型アイサイトXのセンサーイメージ(2020年)(画像:SUBARU)

――なるほど、スバルとしても基礎開発からアイサイトXに到達するまで30年以上の年月を必要としたわけですから……。でも、こうした努力の蓄積があるからこそ、世界トップクラスの先進安全技術として世界から評価されるようになったわけですね。

柴田:正直、つらいことも数多く大変なことばかりでしたが、開発チームの熱意でここまで到達したという感覚です。ですが、この先も開発の手は緩めず継続進化を目指します。

――ところで、昨今の一部メディア報道に、「スバルが2020年代後半に一般道路において自動化レベル2以上の技術を使う」との記事がありました。歩行者や自転車などとの混合交通になる一般道路でACC機能や車線維持機能を使う、そんなイメージを持ちましたが、これは事実ですか?

柴田:一般道路での自動走行は考えていません。いまだに発生件数の多い一般道路で発生している交通事故を減らすことを現在の目標のひとつにしてわれわれは先進安全技術を開発しています。

現状、すべての事故形態に対応しきれていませんから、そこを少しでも対応できるようAI開発の主軸であるSUBARU Labなどでの研究成果をもとに実用化へとつなげたいと考えています。

――では改めて、スバルにおけるAIの位置づけを教えてください。

柴田:具体例のひとつとして、アイサイト搭載車が進むルート選定の精度を高める手段としてAIがある、こう位置づけています。ステレオカメラでは道路形状の把握や白線を認識しますが、仮に白線が見えなかったり擦れてしまったりしている状況でも確実に認識できるようAIを活用したいと考えています。

また、どこが危険箇所で、それはどんなリスクなのかといった判断にもAIが活躍します。その点、スバルにはステレオカメラがあるため、外界の情報が立体情報として入力されます。また、その物体に対する接近速度などの情報も同時に取得できるため精度を保つうえでも有利です。道路だけでなく、建物やガードレールなどの物体認識もAIを使ってさらに精度を高めていきます。

次ページステレオカメラの現時点における弱点は?
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事