スバル「アイサイト」はこんなにも徹底している 生みの親に聞く先進技術の歩みと将来の可能性

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――逆風も吹くなか、ステレオカメラのみで前方車両や障害物を判断し、ドライバーに回避動作を促すシステムを見事に確立したわけですよね。開発にあたり、どんなご苦労があったのでしょうか?

柴田:肝心のステレオカメラによる制御技術が追いつかず、CCD方式のカメラを使った初期のADAでは満足できる結果がなかなか出ませんでした。現在、SUBARU Labに所属する齋藤徹・副所長が、初代アイサイトの画像処理を担当していたのですが、精度が高まらず一緒になって悪戦苦闘したことをよく覚えています。

諦めず研究を積み重ね徐々に精度が高まってくると、今度は夜間の精度が足りないという問題が発生しました。

初代アイサイトのステレオカメラ(2008年)(写真:SUBARU)

そこでわれわれは基本に立ち返ったのです。人の眼では夜間に対応できるのにカメラではなぜ、それができないかという原点から考え直しました。当時、最新のスペックを誇っていた最新のマイコンを使い、なぜ、対応できないのか……。開発の現場では、その“なぜ?”に徹底してこだわり、各人が自問自答しながら、徹底的に深いところまで開発にのめり込んだのです。

多大な時間と労力を費やし、ついに夜間の精度が高まりました。でもまた次の課題が発生。雨天での制御内容に不足が見つかりました。しかしわれわれはあきらめず、そこでまた深いところまで開発を落とし込み……、完成に至るまでその繰り返しでした。

なにしろ、ステレオカメラのスペックからシステム全体の構成、ステレオカメラを収める筐体や車両制御プログラムに至るまでゼロからシステムを作り上げていったので、相当な労力を必要としました。

ミリ波レーダー搭載で課題は大きく改善

――ステレオカメラにミリ波レーダーを組み合わせた進化型ADA(2003年)もありましたよね。

柴田:はい、われわれは「ADA3」と呼んでいます。ミリ波レーダーを搭載することでこれまでの課題は大きく改善し、滑らかなブレーキ制御技術など有用性の高い機能をたくさん追加しています。

――ただ、価格がネックになったようで、前モデルの「ADA2」(2001年)からさらに高価格になりましたよね。

柴田:はい。それもあり、販売台数はそれほど伸びませんでした。

――2006年にはLiDAR(別名/レーザーレーダー)を使った「SIレーダークルーズコントロール」搭載車が発売されました。当時、私も首都高速道路や東名高速道路で試乗しましたが、全車速追従機能付のクルーズコントロール(現在のACCに近い前走車追従機能)の精度が高かった印象です。「割り込み車両に対するブレーキ制御が滑らか。ステレオカメラに複数のミリ波レーダーで制御を行うレクサスLS(2006年モデル)と同レベル」というレポートを工学専門誌に寄稿したくらいです。

柴田:4代目レガシィのツーリングワゴンとセダンであるB4に設定しました。

――SIレーダークルーズコントロールは4代目レガシィに初搭載された「SI-DRIVE」(Subaru Intelligent Drive/現在の可変ドライブモードに相当)との連携も図られていて、「インテリジェントモード」選択時は燃費性能が向上するよう前走車への追従を滑らかにするなど画期的でしたよね。そしていよいよ、初代「アイサイト」が2008年5月に誕生します。

柴田:ステレオカメラのみで、前方の車両や障害物、さらには歩行者や自転車を含めた二輪車までも認識するシステムとして作り上げました。これまでのネックだった価格も大幅に抑え、ベースモデル+20万円で販売しています。

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