スバル「アイサイト」はこんなにも徹底している 生みの親に聞く先進技術の歩みと将来の可能性

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――アイサイトアシストモニターもその成果のひとつなんですね。こうしてシステムの状態を人が理解して、安全な交通環境が近づいてくるわけですが、柴田さんがおっしゃるように、一般道路での事故削減は交通社会全体の課題だと考えます。政府内では、ペダル踏み間違い事故のような不幸な事故を減らすため、先進安全技術の制御を人の運転操作よりも優先して働かせるべきではないか、という議論があります。

柴田:交通社会ではさまざまなことが発生します。このすべてを自動で判断して、必要なときだけ制御を行って事故を防ぐ……、これはひとつの理想型です。この先、人が違和感を抱くことなく、そして人の運転操作に対する自由を保持しながら、最適なところで衝突回避できる未来がくることを願っていますが、実現には時間を要します。ただ、現実は待ってくれません。

最新型アイサイトXの渋滞時ハンズオフアシストを示すメーター表示(2020年)(画像:SUBARU)

私個人の意見として、ある状況下においては、事故を防ぐことを優先して、何がしか人の運転操作の一部を制限するようなことも必要なのかと、現実に発生しているペダルの踏み間違い事故などを見ていると感じます。事故の当事者であるドライバーにしても、ペダルの踏み間違いはショックも大きいでしょうし……。

自由と制限のジレンマ

――事故の心配や、運転操作に不安のある方は、高齢化の進行とともに日本では増えていくと考えられます。

柴田:心配や不安を抱える、そういったお客様に対してどんな技術が準備できるのか、われわれは真剣に考えています。ペダルの踏み間違いによる事故など、これをどうやって防げばいいのか、まさに技術部の課題です。現時点での先進安全技術は人の操作が優先ですから、この状況は自由と制限のジレンマであるとも言えます。

――内閣府による「第11次交通安全基本計画」では2025年度までに事故発生から24時間以内の死者数を2000人以下、重傷者数を2万2000人以下にすることが織り込まれました。死者2000人以下とは非常に高い目標値であり、これが実現すれば世界でもっとも安全な交通社会が実現します。ただ、この高い目標の実現には、ドライバーやライダー、自転車に乗る人や歩行者などすべての交通参加者の協力が不可欠に思えます。

柴田:そうですね、非常にむずかしい課題です。ただ、われわれ技術者は、なんとしても技術で事故を減らしたいと考えています。アイサイトを活用してどうやって事故を減らしていくのか、そのアイデアをこれまでもたくさん考えてきました。それだけにわれわれのモチベーションは高いところにあります。

アイサイトをはじめ、各社が実用化した先進安全技術の効果もあり、交通事故による死者が減り、事故件数も減ってきました。ただ、ゼロではありません。課題がまだ残っているのです。

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