「無意味な仕事」を続けた男が辿った最悪の末路 どうでもいい仕事は心をむしばんでしまう

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ここはイギリスの学歴社会の文脈があり、わたしたちにはなかなか実感できないのですが、そこで働く男性(男性が中心です)たちは、おなじような大学出身──あえていえば、早慶出身者をイメージしたらよいでしょうか──で、たがいにライバル意識むきだしだったらしく、だから、そもそも連携なんかしたがっておらず、連絡もろくになく、バラバラだったのですね。だから、そうでなければ別に必要のないものだったのです。このイントラネットも。

ところが、さらにわかってきたのは、事態はもっと悪かったということです。これだったら「尻ぬぐい」ですが、だれも「尻ぬぐい」すら期待していなかったのです。「尻ぬぐい」というのは、こういう連絡の不備をとりつくろってほしいからそこにある仕事ですが、この会社では、不備をとりつくろってほしいとは考えられていなかったのです。

たとえば、片方のパートナーが事業を提案します。もう片方は、それに反論したりはせず、同意したふりをします。それから、かれらは、全力をふりしぼって、連携がうまくいかないよう努力します。

ブルシット社員の大胆すぎる反乱

じゃあなんで、エリックのポストがおかれたのか。かれによれば、そのポストを望んで提案したのは、この状況を問題であると考え、改善を望んでいた、会社でもたった一人の人物だったのです。つまり、それ以外の人間はだれもそんなことを望んではおらず、だから人事もおざなりだったのです。

ITの経験などまったくない21歳の歴史学科出身の学生でもなんでもよかった、というか、むしろ変に職務に適合した「人材」なんかはめんどくさくなりそうだから、まったくそれと縁もゆかりもない人物のほうがよかったのでしょう(エリックもそう考えています。「あの人たちがぼくを必要としていたのは、まさに、あの人たちが実行してほしくないことを実行するスキルが、わたしになかったからで、だから、あの人たちはわたしをつなぎとめようと、すすんで金を払おうとしたのです」)。

そもそも、会社が用意したインターネット環境も最悪のもので、しかも、そのような社内をカバーする通信回線にはみんなが警戒している(監視されてるんじゃないか、と)。だから、エリックにはほとんどなにもすることがありませんでした。数カ月でそれにエリックは気づいたみたいです。あ、オレなんにもすることがない、と。

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