国家安全保障とエネルギー
10月末からグラスゴーで開かれた第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)は、石炭火力発電の今後の取り扱いについて意見が割れ、2040年までの全廃を求めるイギリスや欧州諸国と、新興国・資源国などが対立する熾烈な争いの舞台となった。
日本へも強い圧力がかかる中、岸田文雄首相は石炭火力発電廃止への言及を避けたが、その背景には、日本のエネルギー安全保障の脆弱性がある。国際エネルギー機関(IEA)の定義によれば、エネルギー安全保障は「合理的な価格でエネルギーが継続的に利用できること」だが、エネルギー資源のほぼすべてを海外からの供給に依存している日本にとって、それは非常に困難な課題である。
しかしエネルギーは経済活動の根幹であり、その安定供給を死守することは国民の生命と財産を守るための最重要事項、まさに国家安全保障の要である。
それにもかかわらず、エネルギーをめぐる総合的な戦略はいまだに存在せず、エネルギー安全保障の概念は浸透していない。日本の安全保障政策の今後5~10年の中長期的基本方針を示す「国家安全保障戦略」は、岸田政権下で来年末に改定される見込みだが、例えば現行の「国家安全保障戦略」(2013年策定)において、「エネルギー」についての言及は以下のような内容である。
資源国による資源ナショナリズムの高揚や新興国によるエネルギー・鉱物資源等の獲得競争の激化等が見られる。/ロシアとの間では安全保障及びエネルギー分野を始めとするあらゆる分野で協力を進め(…)る。/湾岸諸国との間で、資源・エネルギーを中心とする関係を超えた政治・安全保障協力も含めた重層的な協力関係を構築。/エネルギー・環境問題への対応/エネルギーを含む資源の安定供給に向けた各種取組に外交的手段を積極的に活用する。
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