6年間で5000個食べた男が語るシュウマイの魅力 老舗から冷凍食品まで実はこんなに多彩だった

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『シュウマイの本』では、北海道のホッキしゅうまいや宮城の牛たんシュウマイ、鳥取のかにとろシュウマイ、ジビエ(猪肉)を使った京都の山肉シュウマイなど、著者セレクトによる全国のご当地モノを紹介。シュウマイツーリズムへと誘うラインナップが並ぶ。

いかしゅうまいの大ヒットにより、「魚介のすり身を、刻んだワンタンの皮でまぶす」というスタイルが定着した(写真:元田喜伸/産業編集センター)

新たな潮流「酒場でシュウマイを食する」

現在、シュウマイは第7世代。常識にとらわれない若い世代が、自由な発想を生かして作る新しいシュウマイは、新たなファンを増やしつつある。

なかでも大きな潮流となっているのが、酒場という業態だ。先駆的な存在として、フレンチの調理技術を活かして作る東京・渋谷のミニヨン坂の上(現・焼売酒場小川)や、従来の蒸し以外にも「揚」「焼」「水」の4種類とチリソースなど、多彩なつけだれを提供する東京・紀尾井町の野田焼売店などが挙げられるが、シーンを牽引する存在は九州にある。

「福岡にある焼売酒場いしいは酒場スタイルを完全に確立して、シュウマイ業界全体に大きな影響を与えています。シュウマイの具材には一般的に用いられる豚ではなく、九州でなじみの深い鶏肉を使用していて、レモンサワーに合うシュウマイとして地元の女性を中心に定着しています。他にも、カウンター中心の明るい雰囲気やパクチーサラダ、無限もやしといったサイドメニューも気が利いている。飲食店の競争の激しい博多や天神界隈でも、お店に足を踏み入れた瞬間『これはウケるな』と直感でわかります」

その他、いしいよりもさらにカジュアル感を演出し、白湯スープに浸した「炊きシュウマイ」など個性的なメニューを揃える関東のチェーン・焼売のジョーや、フレンチのシェフが羊肉や熟成肉を使ってユニークなシュウマイを作る東京・渋谷のKAMERA(カメラ)など、第7世代の注目店を挙げれば枚挙にいとまがない。

「焼売酒場いしい」の鶏しゅうまい(90円)は1個単位で注文可能(写真:シュウマイ潤)

それでも、全国のシュウマイ専門店はようやく70軒。数だけ見れば、餃子にはまだまだ及ばないのが実情だ。

『シュウマイの本』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

「餃子と比べられるのはもはや宿命ですが、むしろこの立場を楽しんでもいますし、マジメな話、シュウマイならではの魅力も確実にあります。まずローカルに根ざしている点。崎陽軒や551蓬莱といった大御所ですら販路を拡大しすぎず、地元を大事にしながら堅実にビジネスを展開している。そして、第7世代に代表される自由で大らかなところ。それだけ伸びしろがあるといえるのではないでしょうか」

明治期に大陸から日本へ伝えられて、すでに1世紀あまり。戦後から長らく続いたシュウマイ不遇の時代が令和の今、終わろうとしている。

宗像 幸彦 ライター・編集者

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Yukihiko Munakata

熊本県天草市出身。出版社勤務を経たのちフリーランスとして主に雑誌やWEB媒体で活動し、グルメ、カルチャー、旅行、農業関連の記事を手がける。2020年まで編集として携わったグルメサイト「メシ通」では「極限メシ」「TOKYOラーメン系譜学」「舌対音感」などの連載を担当するとともにローカル在住のライターと結託してご当地グルメの発掘に尽力した。2020年には企画制作会社(株)GUINGAを設立し、現在は大手流通向けメディア「TABLEVA(タベレバ)」制作ほか、あれやこれやと。

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