なぜなら、投資家たちに否定される金融政策は、株価の暴落をもたらし、これはメディアと世論の批判を浴びることになるからだ。結果的にその後の金融政策の自由度も効果も失われるため、部分的に迎合することになっても、投資家に歓迎される政策を打ち出し続けることで、政策の主導権を金融政策当局側に取り戻すことが、これまでのFRB議長の役割だったからである。
グリーンスパン(元FRB議長)もバーナンキも、就任当初の危機をこの方式で乗り切った。任期の後半は、逆に市場を支配することに成功したのである。
「儲かる金融市場の時代」の終わり
一方、イエレンには課題がほとんどない。出口戦略うんぬんと言われるが、投資家が大騒ぎするだけのことであって、何の困難もない。そういうと中央銀行関係者には怒られるし、実際には細かく難しいことはあるのだが、大局的には問題ない。
なぜなら、景気は良いし、経済は危機を脱したからである。現状が良いのだから、多少の混乱があっても実体経済はそれをこなしで乗り切るはずである。大騒ぎしているのは、投資家たち、あるいは金融市場関係者たちであり、断末魔の叫びのようなものである。なぜなら、儲かる金融市場の時代が終わったことを彼らが一番よく知っているからであり、出口とは、その時代の出口を意味しているからである。
儲からなくなった構造で、最後の頼みはゼロ金利と大量のマネー、流動性であった。これがなくなれば、職業投資家でない、一般の投資家、あるいはじっくりと構える真の投資家たちですら、バブルモードからは撤退するだろう。そうなれば、流動性相場は終わりであり、構造的に儲からなくなった業界への最後のお恵みだったものも終わってしまう。だから、大騒ぎしていたのである。しかし、彼らもあきらめがついたようで、もう出口うんぬんは、今後は問題にならないだろう。
この状況をイエレンもよくわかっていた。だから、自分の大好きなネタで、のんびり自由にスピーチができたのである。そして、彼女がゆったりできるのは景気がよいからであるが、しかし、もっと根本的な問題は、金融市場の終わり、職業的トレーダーたちの終わりで、彼らの実体経済への影響力がなくなったからである。
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