大谷翔平のような人が育ちにくい日本組織の弱点 上司の干渉、トップ介入が横行するマネジメント

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マイクロマネジメントが行われる背景にあるのは、上司の「不安感」です。自分の責任の範囲内では、失敗を防ぎたい。自身の評価に傷をつけたくない。そのために部下の業務に細かく目を配ることになってしまうのです。

相手(=部下)にとって重要かという視点ではなく、自分(=上司)にとって重要かという視点を優先し行動する心理。これがマイクロマネジメントがはびこる理由です。

上司からことあるごとに干渉される部下は、次第に上司の顔色を伺いながら仕事をするようになり、自主性が奪われます。自分の判断で動いても、上司のマイクロマネジメントによって細かく指導されるため、だんだん自分で考えることをやめて、上司の言うとおりに動くようになってしまいます。結果、指示待ちになり生産性が大幅に下がります。

また、上司の厳しい管理下に置かれると、自由に業務を行うことができません。失敗もしないかわり成功体験を積む機会も奪われます。部下の成長は止まってしまい、業務がだんだんとつまらないものになってきます。自分で考え行動できる、能力の高い人材ほど、退職してしまいます。

現場に口出ししたがるトップ

上司のマイクロマネジメントと同じように残念なのが、トップをはじめとした経営幹部の現場介入です。経営幹部が現場に入り込んでしまうと、現場の指揮命令系統を壊し、人材育成も阻害し、少し長いスパンで見ると会社を致命的な危機に向かわせてしまうことになりかねません。

そもそも、トップの持っている情報や価値観は、現場のそれとはかけ離れていることが多いものです。時代感覚も違えば、世界観も違うし、相場感も違う。今、その場にいなければ、やはり空気感まではわからないのです。したがって、本来のあるべき姿としては、現場に成功法則をしっかり理解してもらうことに徹し、具体的なところは任せることです。

にもかかわらず、現場に口を出すトップは少なくありません。会社経営の全責任を背負い、これまでずっと会社を存続させてきた自負は、時に人間を「独善的」にしてしまいます。そうなると、任せられる優秀な現場リーダーがいないと感じがちになり、俺の指示どおりやってみろ、ということになるのです。

現場への介入で弊害が大きいのが、自分の好き嫌いで評価や人事を決定するケースです。自分の考えていることが正しいと考えるトップほど、“人を見る目は優れているはず”という自信を持っています。結果的に、自分の感覚で昇進を決めたり、評価に口出しをしてしまったりするのです。「社長の好き嫌いで昇進が決まる」というような愚痴は、どの職場からも聞こえてきますが、これは言うまでもなく現場のモチベーションを著しく低下させます。

次ページ背景にある日本型雇用の残滓
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