大谷翔平のような人が育ちにくい日本組織の弱点 上司の干渉、トップ介入が横行するマネジメント

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モチベーション3.0の申し子といえる大谷選手の活躍も、彼個人のチカラだけでなしえたわけではありません。支えてきた組織や見守り続けたトップがあってこそです。

たとえば、ドラフトで一本釣りした日本ハムファイターズの栗山英樹監督。彼は、大谷選手の才能と可能性を確信していました。大谷選手本人も「僕が(日本ハムに)入団したときから、本当に栗山監督もいろいろなことを言われたと思いますし、本当にご迷惑をおかけしたんですけど、今こうして、周りの人々に少しずつ(二刀流を)受け入れてもらえているのも、栗山監督がいてくれたからです」と、見守ってくれた監督への感謝を惜しみません。

また、今シーズンを一緒に戦ったエンゼルスのマドン監督も大谷選手のよき理解者のひとり。「ショーヘイについて言えるのは、彼は(二刀流を認める球団と)契約したということだ。後は彼のやりたいようにやらせるだけ。ああしろ、こうしろとうるさく言わないこと。コントロールしようという意識が強すぎるとダメだ。はたから見て言いたくなることは山ほどあっても、本人の気持ちを尊重しないと」と、自律性を尊重する発言をしています。

真逆のマイクロマネジメント

彼の才能を信じて任せきる上司たちの存在が、大谷選手の成功を後押ししたのです。思い返せば、あのイチロー選手にも、同じような存在として故・仰木彬監督がいました。仰木監督はイチロー選手の独特なバッティングフォームをまったくいじることなく見守り続けました。のちにイチロー選手はメジャーリーグでMVPを獲得しますが、その原点となったのがこの恩師の信念であったのは周知のとおりです。

しかし、このような美談とは真逆な事象がまかり通ってしまっているのが、日本における職場の実態です。上司が部下の仕事ぶりに過度に干渉する「マイクロマネジメント」が横行しています。

大谷選手の「二刀流」をいぶかしく感じ封じてしまう。あるいはイチロー選手のフォームを矯正しようとする。こうしたマネジメントを行う上司のほうが日本の組織では圧倒的に多数派なのです。

ありがちなマイクロマネジメントの例としては、

・業務の進捗を細かく確認してくる
・小さなミスの原因について、詳細な報告を求める
・提出された書類に不備があった場合、フィードバックせず自分で直してしまう
・部下の出すメールの内容について、その文面にまで口を出す
・会議での発言の仕方について、会議後に叱責する
・目標が未達の場合はもちろん、達成した場合も達成した理由を資料で報告させる

などなど。こうしたことに思い当たるビジネスパーソンは少なくないはずです。

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