大谷翔平のような人が育ちにくい日本組織の弱点 上司の干渉、トップ介入が横行するマネジメント
3人の飛行士が事故で命を失うなど、プロジェクトは困難を極めましたが、1969年についにアポロ11号が人類初の有人での月面着陸に成功しました。
それから半世紀以上経ったいま、「とても困難だが実現すれば大きなインパクトのあるワクワクする壮大な目標や挑戦」を指す意味で、この「ムーンショット」という言葉が、シリコンバレーの企業の間で使われ始めるようになったのです。
モチベーション3.0の申し子
ムーンショット目標を達成するうえで注目を集める「モチベーション3.0」という概念があります。アル・ゴア元アメリカ副大統領の首席スピーチライターを務めたこともある作家、ダニエル・ピンクによって提示されました。
その著書では、人の動機にも、コンピューターと同じように“基本ソフト”があると解説されています。生存を目的とする生理的なモチベーションが「モチベーション1.0」。功績をあげれば報酬を得て、できなければ罰を受ける「信賞必罰」的な考えに従ったモチベーションが「モチベーション2.0」。これは、人が外から与えられる外発的な動機です。そして、最新の「モチベーション3.0」は、自らの内側から湧き出るやる気に基づいた仕組みです。
これまで、多くの企業で取り入れられてきたのは、成果に対してお金やモノを与えるという条件を提示してやる気を引き出す「モチベーション2.0」の考え方です。当然ながら仕事は多くの人にとって収入を得るためのもの。しかし、報酬という条件を提示されて得られる動機は、自分の外から与えられるものであり、その動機には限界があります。
それよりも、内発的に動機づけされたこの「モチベーション3.0」こそが、人を動かしパフォーマンスを高めるうえで極めて重要な概念だと、彼は説明しています。
興味深いのは、多額の報酬を手にする=外発的動機づけの最たる世界の1つであるメジャーリーグに身をおく大谷選手が、あまり報酬に関心を示さないことです。彼は、明らかに自分の夢を追いかけるという動機から、ムーンショットを達成しています。これはまさに、いかに内発的動機づけが成果につながるかという証左の1つです。
では、実際に職場で、内発的な動機を引き出すためには何をすればいいのでしょうか。一般的には、好きな仕事に割く時間を与える、自分で仕事の目標を決めさせる、仕事の判断を任せる、労働環境に選択肢を与えるといったことが挙げられます。つまりは「自律性」の提供なのです。
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