大谷翔平のような人が育ちにくい日本組織の弱点 上司の干渉、トップ介入が横行するマネジメント

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大谷翔平選手が偉業を達成しました(ロイター/アフロ)

渡米4年目を迎えた今季の大谷翔平選手が満票を獲得しMVPに選出されました。打ってはリーグ3位の46本塁打に100打点26盗塁を記録。投げても9勝2敗、防御率3.18、156奪三振をマークし、投打で異次元のパフォーマンスを披露。「二刀流」で日本のみならず全米の野球ファンを魅了しました。

この驚異的な活躍は、もちろん本人の強い意志とたゆまぬ努力の賜物です。しかし、彼を見守ってきた球団や監督をはじめ、周囲の素晴らしい環境がその一助として奏功したことも事実です。そして、その環境についてひもといていくと、逆説的に、旧来型雇用慣行が染みついた日本企業組織の欠陥にぶち当たります。それが「未熟なマネジメント」。大谷翔平選手の活躍が浮き彫りにした残念な日本型マネジメントについて、組織開発の観点から眺めてみます。

月へ向かってロケットを打ち上げる

「本当にやりたいことを口にしたら、そんなことできっこないと人から笑われた」

「途方もないくらい大きな目標すぎて、挫折しそう」

自分や誰かの持つ夢や目標が、想像もつかないほど大きなとき、“ばかばかしい夢物語だ”とか“非現実的な妄想”などと、否定的に見てしまうことはありませんか。

しかし最近は、壮大な夢や目標こそが人々を奮い立たせ、現実の困難な問題を解決する方法だとする考えが広がりつつあります。それが「ムーンショット目標」です。大谷選手が掲げた「二刀流」は、まぎれもなくムーンショット目標です。というか、とてつもなく大きなムーンショット目標です。

ムーンショットを目標として取り入れているので有名な企業が、あのグーグルです。今までの延長のような考え方ばかりしていては成長に限りがある。他社に追い抜かれるかもしれない。それよりも、現状を飛躍的に変えるような、まだ誰も考えたことのないようなことを目指したほうが大きな成長が見込める。ITの巨人が「ムーンショット目標」を設定するのは、飛躍的な成長を意図的に促すためなのです。

もともと「ムーンショット」とは、“月へ向かってロケットを打ち上げる”ことを意味します。1961年、ケネディ大統領は「10年以内に人間を月に着陸させ、安全に地球に帰還させる」という文字どおり前代未聞の計画を発表。このときのスピーチに端を発した言葉なのです。

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