「ものが言えない」恐怖で人を縛る会社の怖い末路 「言ったもん負け」か「何を聞いてもよい」か
「言ったもん負け」の三菱電機と、ソニーの違い
三菱電機で1980年代から品質不正が常態化していたことが明らかになった。なぜ30年以上も不正が放置されていたのか。三菱電機が2021年10月1日に公表した調査報告書のp.170に、原因の一端をうかがわせる一文がある。以下は報告書からの抜粋である。
「長崎製作所には、『言ったもん負け』の文化のようなものがある。改善を提案すると、言い出した者が取りまとめになり、業務量の調整もしてもらえないので、単純に仕事が増える。そのため担当者は皆、QC診断の場など公の場では何も言わず、飲み会や雑談の場でだけ職場の問題を話す」
本音が言えるのは飲み会や雑談の場だけ。ビジネスの場では何も言わず本音を隠す。こうして本来は改善すべき現場の問題も、隠蔽されてしまったのだ。
本音という視点で考えると、逆のケースもある。低迷するソニーを復活させた前CEOの平井一夫氏は、著書『ソニー再生』(日本経済新聞出版)の冒頭でこう述べている。
「自信を喪失し、実力を発揮できなくなった社員たちの心の奥底に隠された『情熱のマグマ』を解き放ち、チームとしての力を最大限に引き出すこと。リーダーの基本ともいえるようなことを愚直にやり通してきたことが、組織の再生につながったと実感しています」
平井氏は社長時代の6年間、世界中の拠点で70回以上のタウンホールミーティングを行った。このタウンホールミィーティングはルールが1つだけあったという。それは「このセッションにはルールはない。つまり何を聞いてもよい」。そして社員たちと本音の交流を続けてエンジニア魂に火をつけた。
しかしこう言うと、「なるほど。わが社も低迷脱却のために、タウンホールミーティングをやるか」という経営者がいるかもしれない。残念ながらそれだけでは解決しない。
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