「ものが言えない」恐怖で人を縛る会社の怖い末路

「言ったもん負け」か「何を聞いてもよい」か

私には「これは日本文化特有の問題だ」という分析が、現在の日本企業の閉塞状態を生んでいるように思えてならない。「これは日本文化に染みついた根深い問題なんだ。仕方ないじゃないか……」という「単なる言い訳」に聞こえてしまうのだ。単なる言い訳からは、解決策は決して生まれない。具体的に問題を見極めたうえで、問題の解決を図らない限り、その問題は必ず再発する。では日本企業は、心理的安全性が高い組織はつくれるのか。

エドモンドソンは「日本では率直な発言やミスの報告を促そうとしても、徒労に終わる」という意見に対しても、このように異を唱えている。

「トヨタ生産方式は立場の上下を問わずに、全従業員に積極的に誤りを指摘することを求める。……つまり、やろうと思えばできる、ということだ」

まさに慧眼と言える指摘であり、私もまったくそのとおりだと考える。確かにトヨタは典型的な日本型組織だ。しかし問題を克服すべく挑戦を続けて、成果をあげている。「人間は、どこの世界でもそれほど変わらない」と考えて、具体的に組織の問題を見極めれば、解決策も見えてくる。要は「言い訳はやめて、本当にやる気があるかどうか」なのだ。

「心理的安全性」が高い組織のつくり方

映像制作会社のピクサーは『トイ・ストーリー』をはじめヒット作を量産し続けているが、実は「最初はどの作品も箸にも棒にもかからない駄作」だという。そのような駄作を磨き上げていくのが、「ブレイントラスト」と呼ばれる同社の仕組みだ。

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ブレイントラストでは、映画の制作中、数カ月ごとに関係者が集まり、直近につくられたシーンを一緒に観て評価し、忌憚のない意見を監督に伝えて創造的な解決を手伝う。メンバーは「作品の成功は誠実で正直なフィードバックを繰り返し行えるか否かにかかっている」ということを共有したうえで、「建設的なフィードバック」「相手には強制しない」「共感の精神をもつ」という3つのルールを徹底して議論する。

同社のようなクリエーティブな活動では、リスクや失敗が不可欠だ。失敗を回避する行動は命取りになる。そこでピクサーは、社員が失敗を恐れない心理的安全性の高い組織になるように、つねに努力し続けているのだ。

また、リーダーが無知であることは大きな強みになる。「すべてを知っているのがリーダーでしょ?」と思いがちだが、違うのだ。アメリカのあるアパレルブランドのトップは、自らを「無知の人」と呼び、人の話をよく聞くという。彼女はこう話す。

「知らないから真剣に耳を傾けます。すると、みんなが力を貸そうとしてくれます。教えてあげたいと、みんな思うんですね」

彼女には「知らない」という弱さと、知識を吸収する力がある。だから、メンバーは安心して自分のアイデアを突き詰めて考える。無知は、逆に彼女の強みなのだ。そのおかげで心理的安全性が高い「恐れのない組織」ができていく。

謙虚さとは「自分はすべて答えをもっているわけではない。未来も見通せない」と率直に認めることだ。研究によれば、リーダーが謙虚さを示すと、チームは学習行動に対する積極性が増すことがあきらかになっている。

あなたの組織では、現場の社員が言いたいことを、そのまま言えるだろうか?

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