脱サラして「唐辛子に懸けた男」の凄すぎる生き様 畑の隅にあった「1粒の実」が運命を変えた

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一方、芥川さんの唐辛子は、辛いだけが売りではない。同園で作られた一味唐辛子の粉末の香りをかぐと、市販のそれとはまったく違っていた。素人にも明らかに違いが感じられるほどの豊かな風味。芥川さんは秘訣をこう明かす。

「鷹の爪を原料に使う場合、一般の業者では自然乾燥させた後、窯で水分を飛ばします。大量生産するために仕方ないのですが、熱を加えることで、香りがどうしても消えてしまうんです。うちは三輪そうめんの製法を取り入れ、冷風乾燥をしているので、手間はかかるのですが、本来の色や香りを損なわない仕上がりになっています」

頑固オヤジの店のような商売のスタイル

非効率であっても、とことん質の高い唐辛子をお客さんに届けたい。それが芥川さんのこだわりだ。自らの商売のスタイルを、頑固オヤジの店だと芥川さんは説明する。

変わった品種も多数育てているのが芥川農園の特徴であり、愛だ(写真提供:芥川さん)

「うちは僕ひとりで唐辛子を育てて、加工もしています。だから生産できる量は少ないし、値段も高いけれど、品質は絶対に負けないです。よく『人を雇ってもっと生産したら儲かるのでは?』と言われますが、僕は自分の手でつくることにこだわりたい。同じく、お客さんにも直接、自分の手で発送したいので、販売窓口も1カ所だけにしています」

規模を拡大すると、確かに生産量は上がるが、どうしても自分の目が届かなくなる。すると品質が落ちかねない。また販路を増やすと、他人に販売を委ねることになり、消費者とのつながりが希薄になる。結果、高品質への意識が下がってしまうかもしれない。だからこそ、すべてを自分の手で行うのが、芥川さんの流儀なのだ。有名デパートやスーパーからの出品依頼もすべて断っているという。そのこだわりが消費者からの信頼になり、熱心なファンも増え、ブランドとしても確実に育っている。

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